春夏秋冬 春は姉さん。淡く色付いた桜と姉さんの白い肌と明るい金糸の組み合わせはまるで砂糖菓子みたいで可憐だ。桜に攫われる心配などしない。僕が姉さんを離さないから。
「今年も綺麗に咲いたね」
「ええ。フレッドがよく世話してくれましたから」
今日はモリアーティ家の広大な庭で花見会。庭は屋敷と桜の木に囲まれており外からの視線を気にすることなく楽しむことができる。僕は外からは見えないこの庭の造りにとても感謝している。美しい姉さんの姿を他の奴らに見せなくて済むからだ。
「ふふ、モランってばもう酔ってる。……兄さんが外に出られないのは残念だけどね」
「花粉症ですからね……でもテラスから見られるようにしっかりと窓を磨いておきましたから、兄様もこの景色をご覧になってるはずです」
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