天国(仮タイトル) 厄介なのに捕まった、と一真は心の中で舌打ちをする。彼の目の前には酩酊状態の男がいた。
男は一般的に見て大柄な部類に入るだろうが一真も体格には恵まれている。戦えば勝てるという考えはあったが、暴れれば彼がセンセーと慕う人間に迷惑がかかるだろう。それは一真の望むところではない。
時間も遅く、人通りはない。月こそ明るいが照らされた現状を見つける人間はいないだろう。一真は大きくため息を吐く。酩酊状態の男からアルコールの匂いがしないことに一真はとっくに気がついていた。
コイツ、ドラッグをやってるな。
さてどうするか。暴れるわけにはいかないという考えは「暴れてもバレなければ問題ないか、」というところまで形を変えていた。ガタイがよく、加えて理性のタガがクスリでぶっ飛んでいる男と殴り合ったら自分も無事では済まないだろう。階段から落ちたという言い訳が通用する程度の怪我ならいいんだが。
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