父水―――互いに、酔っていた。
この男は、ぞっ、とするくらいの冷たい手をしている。水木がむずがるように身を捩ると、集中しろとばかりに肌にふれている爪先がカリリと軽く皮膚を擦るものだから、く、と思わず息を詰めてしまった。
酔っ払いの戯れだ、こんなのは。
本気にしたらこちらが馬鹿をみるのが目に見えている。水木が頑なに唇を引き結ぶと、彼に覆い被さっている男が喉の奥で笑ったような息遣いが聞こえた。
悪戯な指先は、すっかり着崩れてしまっている浴衣から侵入を果たし、水木の胸元へと向かった。指先がまるで踊るように滑ると、肌に刻まれた瘢痕の縁をなぞる。
は―――、と熱い息が漏れたのは、どちらだったのか。
するりと硬い指先がざらついた疵をなぞる。引きつれた古傷は皮膚が薄いぶん、男に触れられると、自分が嬲られていることをまざまざと水木に思い知らせてくる。快感を引き出そうとしてくる男の手つきに負けてたまるかと、水木は息を詰めてぎゅうっと目を瞑った。
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