クリスマスの装い バイトからの帰り道――
帰路を急ぐ俺を呼ぶ声が塀の上から降ってきた。
「こんばんは、少年」
俺のことを〝少年〟なんて呼び方する奴はひとり……いや、一匹しかいない。眉をしかめて声のほうを見上げれば、顔なじみの猫又がなぜだかサンタの帽子を被って鎮座していた。
「それ、どうしたんだ?」
「これですか? 公園で昼寝してたら子どもに被せられたんです。意外と暖かいですよ」
当たり前のように俺の肩に飛び降りてきた猫又のその口ぶりからすると、どうやら気に入ったらしい。肩口で器用に丸まられると、帽子の飾りが頬をかすめて少しくすぐったい。
だがまあ。
「妖怪がクリスマスで浮かれた格好してるって、なんか面白いな」
「うるさいですよ!」
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