デイビット・ゼム・ヴォイドの肉体は既に消滅している。
そして魂はテテオカンの北にあるミクトランパ、焚火の前に居座っていた。つまりは死人というべき存在なのである。
戦士であるならばと招かれた休息の地。その場所に、どういうわけか客人の姿がある。アジア人特有の象牙色のまろやかな肌と小柄な体躯。明るい髪色に、きらきと輝く星の如き瞳。外宇宙の端末と化したデイビットにも、分け隔てなく笑い掛ける善良なる人類。カルデアのマスター、藤丸立香。
彼女曰く、いつものレムレムで魂が迷い込んだとかなんとか。大丈夫なのだろうかという懸念はあるが、そういうものなのだろうとデイビットが一瞬で受け入れてから久しい。
今回もまた、よくわからない与太事件に巻き込まれた彼女は現実世界で目覚めるまでの間、こうしてミクトランパに迷い込んできているのだった。
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