無礼千万、無私無偏 あの小娘――記憶が入っているというだけで小娘気分の補助装置は、マーリン魔術などという、余分な設定まで引き継いだ。名前だけなら不愉快程度で済んだものを、『私室』にまでマスターを飛ばすような使い方ができるのは、彼女の加護だか魔力だか。マスターを追い出した室内で、オベロンは誰かに聞かせる音量で舌を打つ。聞かせる相手は、床を這いずる虫くらいだ。
マスターの渡した包みを机に放り投げる。無造作に重ねられたタオルが、丁寧な包みを受け止めた。オベロンは唸り声を携え机に手をつき、汚れに塗れたタオルに収まる赤い包みを見下ろした。は、と意味のない声が漏れる。
「お似合いの玉座だ、マスター」
手持無沙汰にタオルの角度を整えながら、渡された(叩きつけられた!)包みを眺める。袋も中身も量産品の一つだろうが、善人気取りのマスターだ、個別の気遣いくらいはできるかもしれない。そうでなければ、いくらマスターの影響とはいえ、英霊がこぞって返礼品など作らないだろう。
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