tokinoura488
DONETwitterに「#ハイラル城備忘録・青史」のタグでアップしたモブ視点リンゼルSS登場モブ:ゲルド族の踊り子・デューラ・24歳
タイトル:ふたりは運命共同体
ハイラル城備忘録・青史【宮廷踊り子の記録1】
【ふたりは運命共同体】
あたしの名はデューラ。期間限定で宮廷の踊り子として雇われた身だ。
屈強な者の多いゲルド族の中で、踊り子として身を立てている者は少なく、毛色の珍しさもあって呼ばれているのかも知れない。が、自分の踊りを披露する場を与えられていることはありがたく、日々踊りと体を磨くことは欠かさない。
温かな日差し降り注ぐ午後。あたしは城下の宿で身支度を整えた。今日は王宮に呼ばれている。ゼルダ姫には二度目の謁見になるか。
前回はとても疲労しているとのことで、姫の表情は芳しくなく、口数も少なかった。そこに寄り添う近衛兵がそつなつく対応していたのが印象に残っている。思い出すのはその誠実で冷静な対応だけではなく、姫が下がられた後の表情だ。
5771【ふたりは運命共同体】
あたしの名はデューラ。期間限定で宮廷の踊り子として雇われた身だ。
屈強な者の多いゲルド族の中で、踊り子として身を立てている者は少なく、毛色の珍しさもあって呼ばれているのかも知れない。が、自分の踊りを披露する場を与えられていることはありがたく、日々踊りと体を磨くことは欠かさない。
温かな日差し降り注ぐ午後。あたしは城下の宿で身支度を整えた。今日は王宮に呼ばれている。ゼルダ姫には二度目の謁見になるか。
前回はとても疲労しているとのことで、姫の表情は芳しくなく、口数も少なかった。そこに寄り添う近衛兵がそつなつく対応していたのが印象に残っている。思い出すのはその誠実で冷静な対応だけではなく、姫が下がられた後の表情だ。
tokinoura488
DONETwitterに「#ハイラル城備忘録・幻史」のタグでアップしたモブ視点リンゼルSS登場モブ:造園技師 短髪白髪交じりの元気なご老体
タイトル:孤独の終焉
#ハイラル城備忘録・青史【造園技師の記録1・枝を乱す者】の続きのお話
ハイラル城備忘録・幻史【造園技師の記録2】
2 孤独の終焉
刈り込んだ枝葉に、朝露が美しく光っている。儂の手のひらでは今日にでも咲くだろう蕾が、まだ眠そうにしている。この花はゼルダ姫様のお気に入りの花だ。淡いベージュの地味な花だが、とても香りが良い。東の空は次第に明るくなり、薄雲の中から太陽が生まれた。
「今日も綺麗だ」
儂は満足して次の作業へと移る。井戸に水を汲みに行き、水でいっぱいになった木桶を上げる。滑車の音を聞きながら、先日のことを思い出していた。
今は亡き王妃とゼルダ姫様にだけの【隠れ園】に辿り着いた青年。姫付きの騎士となったリンクは、どうやらあれから何度もあの隠し通路を使っているようだ。外から見てもただ庭木が林立しているようにしか見えないが、人ひとりだけ通れるようになっている。彼奴の性格からして、強引な突破はおそらく一度きりのはず。ただ確証はない。ゼルダ姫様が嫌だと言えば、きっとあの騎士は道順を知ったとしても、決して立ち入ることはないだろう。
28952 孤独の終焉
刈り込んだ枝葉に、朝露が美しく光っている。儂の手のひらでは今日にでも咲くだろう蕾が、まだ眠そうにしている。この花はゼルダ姫様のお気に入りの花だ。淡いベージュの地味な花だが、とても香りが良い。東の空は次第に明るくなり、薄雲の中から太陽が生まれた。
「今日も綺麗だ」
儂は満足して次の作業へと移る。井戸に水を汲みに行き、水でいっぱいになった木桶を上げる。滑車の音を聞きながら、先日のことを思い出していた。
今は亡き王妃とゼルダ姫様にだけの【隠れ園】に辿り着いた青年。姫付きの騎士となったリンクは、どうやらあれから何度もあの隠し通路を使っているようだ。外から見てもただ庭木が林立しているようにしか見えないが、人ひとりだけ通れるようになっている。彼奴の性格からして、強引な突破はおそらく一度きりのはず。ただ確証はない。ゼルダ姫様が嫌だと言えば、きっとあの騎士は道順を知ったとしても、決して立ち入ることはないだろう。
tokinoura488
DONETwitterに「#ハイラル城備忘録・青史」のタグでアップしたモブ視点リンゼルSS登場モブ:調馬師・40才代後半・男性
タイトル:人参は美味しい
ハイラル城備忘録・青史【調馬師の記録】
1:人参は美味しい
コイツがここに来るようになったのは、姫付きの護衛が選ばれたと耳にしてからまもなくのことだった。
ここは王族専用の馬房。調馬師のおれが専属になって何年になるだろう。こんな風に自分の馬がいるでもないのに訊ねてくる奴は時々いる。王族の馬を預かる場所として、基本的に調馬師と飼育担当以外は立ち入り禁止だ。周囲をぐるりと囲んだ柵の周辺には衛兵が巡回しているし、大きな門扉の前には見張り小屋もある。
「ただの胡散臭いボウズじゃなかったか」
金属を何重にも輪にしたブラシで、丁寧に白いたてがみを梳かしている細身の青年に目をやった。気に入らないのか白馬はむず痒そうに時折首を大きく振る。その対処に必死で、きっとおれの言葉は耳に届いてはいないだろう。
26241:人参は美味しい
コイツがここに来るようになったのは、姫付きの護衛が選ばれたと耳にしてからまもなくのことだった。
ここは王族専用の馬房。調馬師のおれが専属になって何年になるだろう。こんな風に自分の馬がいるでもないのに訊ねてくる奴は時々いる。王族の馬を預かる場所として、基本的に調馬師と飼育担当以外は立ち入り禁止だ。周囲をぐるりと囲んだ柵の周辺には衛兵が巡回しているし、大きな門扉の前には見張り小屋もある。
「ただの胡散臭いボウズじゃなかったか」
金属を何重にも輪にしたブラシで、丁寧に白いたてがみを梳かしている細身の青年に目をやった。気に入らないのか白馬はむず痒そうに時折首を大きく振る。その対処に必死で、きっとおれの言葉は耳に届いてはいないだろう。
tokinoura488
DONETwitterに「#ハイラル城備忘録・青史」のタグでアップしたモブ視点リンゼルSS登場モブ:近衛兵・20才代・男性
タイトル:差し出す手は
ハイラル城備忘録*青史【近衛兵の記録】
1:差し出す手は
いつになくオレは高揚感に酔いしれていた。
「ゼルダ姫様はここより峡谷を抜けられる。全方向に注意せよ! 心してかかれ!」
隊長の声が林立する苔むした樹木の間に響いた。
ゼルダ様を狙う者が部隊に紛れ込んでいるという情報が伝わったのは、前夜のことだ。リトの村への訪問は変えられない。狙われるとすれば必ず通らねばならない峡谷との予測の元、方策が思案され、そして決行された。
オレの左側を金色の髪を揺らした華奢な身体が遠ざかっていく。その隣には青い英傑服が寄り添って進む。伝説のマスターソードが握られた手。感情の読めない顔に鋭い青い目だけが、やけに強く印象に残るのがリンクという近衛兵だ。オレが入隊した時にはすでに在籍していた先輩に当たるが、オレよりずっと年は若い。オレは目の前で見せつけられる実力の差に猛烈な嫉妬を抱き続けていた。細身の身体からは想像できないほどのスピードと一太刀の威力。それは同じ近衛兵となり前線に出る機会が増えて、より強くオレの心を抉っていく。どんなに追いかけても到底追いつくことのできない領域。そんなのオレにだって分かっている。あいつにとってオレなど歯牙にも掛からない存在だということも理解している。それでもオレの中の嫉視は消えない。リンクがゼルダ様付きとなって以降より強くなったほどだ。
31941:差し出す手は
いつになくオレは高揚感に酔いしれていた。
「ゼルダ姫様はここより峡谷を抜けられる。全方向に注意せよ! 心してかかれ!」
隊長の声が林立する苔むした樹木の間に響いた。
ゼルダ様を狙う者が部隊に紛れ込んでいるという情報が伝わったのは、前夜のことだ。リトの村への訪問は変えられない。狙われるとすれば必ず通らねばならない峡谷との予測の元、方策が思案され、そして決行された。
オレの左側を金色の髪を揺らした華奢な身体が遠ざかっていく。その隣には青い英傑服が寄り添って進む。伝説のマスターソードが握られた手。感情の読めない顔に鋭い青い目だけが、やけに強く印象に残るのがリンクという近衛兵だ。オレが入隊した時にはすでに在籍していた先輩に当たるが、オレよりずっと年は若い。オレは目の前で見せつけられる実力の差に猛烈な嫉妬を抱き続けていた。細身の身体からは想像できないほどのスピードと一太刀の威力。それは同じ近衛兵となり前線に出る機会が増えて、より強くオレの心を抉っていく。どんなに追いかけても到底追いつくことのできない領域。そんなのオレにだって分かっている。あいつにとってオレなど歯牙にも掛からない存在だということも理解している。それでもオレの中の嫉視は消えない。リンクがゼルダ様付きとなって以降より強くなったほどだ。