@t_utumiiiii
DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(15).「トラバサミ」(傭兵とオフェンス)*日記のないキャラクターの言動等諸々を捏造
*傭兵誕生日手紙(四年目/9-?-3ファイルの添付資料)の内容を含みます
救援に馳せる(傭兵とオフェンス) 12月15日午後、実験台を移動しに向かった処刑人は、9-?-3が行方不明になっていたことに気づいた。同時に、処理室でこのメモを発見。
その後の調査を経て、荘園内で9-?-3が残した痕跡が数発見された。その行方は分からないままだ。外部の人員を引き入れて調査を行ったのかもしれない。
***
処理室を脱出したナワーブが当面の住処と定めたのは、森の中で忘れられたようにある猟師小屋だった。どこかしらが破れているのか、風の吹くたびに雪混じりの冷たい風が吹き抜けていく吹雪めいた音が響いてくるものの、曇っている窓ガラスはヒビが入りつつ健在であることが不幸中の幸いだった。追手がある以上、迂闊に火を焚くことはできない。ヒマラヤの気候の元で育ち、職業柄もあって過酷な環境下の生活が長いナワーブは兎も角、負傷したスポーツマンには今の状況すら十二分に過酷なものだろう。
2856その後の調査を経て、荘園内で9-?-3が残した痕跡が数発見された。その行方は分からないままだ。外部の人員を引き入れて調査を行ったのかもしれない。
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処理室を脱出したナワーブが当面の住処と定めたのは、森の中で忘れられたようにある猟師小屋だった。どこかしらが破れているのか、風の吹くたびに雪混じりの冷たい風が吹き抜けていく吹雪めいた音が響いてくるものの、曇っている窓ガラスはヒビが入りつつ健在であることが不幸中の幸いだった。追手がある以上、迂闊に火を焚くことはできない。ヒマラヤの気候の元で育ち、職業柄もあって過酷な環境下の生活が長いナワーブは兎も角、負傷したスポーツマンには今の状況すら十二分に過酷なものだろう。
@t_utumiiiii
DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)※あんまり気持ちよくない描写
(傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
3412ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。