むつき
DONEエビルちゃんと主シロ通訳 きいきい、という小さな声がした。足元を見れば、そこに立って、椅子に座る俺を見上げていたのはエビルだった。すみれ色の、ぽってりしたボディ。シロウが連れている子たちの中でも活発な方の子だと記憶している。主の心配もよそに積極的に前に出ては自分の気になるものをまじまじ観察したり、興味深そうに触ったりしている姿は記憶に新しい。時にはびっくりするようなことも起きて――道ばたにいたカマキリをつつきに行って鎌を振り上げられたり、つまずいて派手に転んだり――そのたびにシロウの元へ慌てて飛んでいっては、よしよしと頭を撫でてもらっていた。
そんなエビルは言葉を操れない代わり、つぶらな瞳でじいっと人を見つめる。何かを要求するみたいに、俺に向かって両手を伸ばした。
1240そんなエビルは言葉を操れない代わり、つぶらな瞳でじいっと人を見つめる。何かを要求するみたいに、俺に向かって両手を伸ばした。