百合菜
MAIKING遙か3・望美→将臣の話。いつか書くかもしれない話の一部。「よお、久しぶり」
屈託のない笑顔を見せながら夏の熊野に現れた幼馴染。
心の奥に小さな痛みを感じながら、望美はそんな彼に笑顔を向ける。
「将臣くん、久しぶり! まさか、こんなところで会えるなんてね」
そう、近所のコンビニで同級生と会ったのとはわけが違う。
いくら京と熊野は関わりがあるといっても、戦乱のさなかゆえ今日から熊野へ訪れるには時として命を掛ける必要もある。
もしかすると、ここでふたりが出会うのは深い理由があるのかもしれない。
あるいは避けられない運命なのかもしれない。
どんな事情であれ、今は将臣と行動をともにすることができるのが望美にはうれしかった。
熊野で将臣と過ごす期間は思いのほか、長くなりそうだった。
なぜなら望美たちも将臣も同じ場所を目的地としていたが、さまざまな障害により、たどり着くのが困難だったからだ。
遠回りをすることにした先で滞在することになった勝浦。
しばらくここに留まることとなり、自由時間を持つことができた。
久しぶりに波の音を近くで聞きたくなり、望美は浜辺へ行くことにした。
「よお、そこにいたのか」
浜でしゃがみ込みながら波を見ていると、幼いこ 2600
百合菜
PAST遙か3・白龍と望美の話「将臣くん、誕生日おめでとう」8月12日、勝浦。
熊野川の怨霊の件は解決していないが、焦ったところで解決できるものでもない。
歯がゆい気持ちを抱えつつ、その憂さを晴らすべく、一行は将臣の誕生日にかこつけ宴を開いていた。
「兄さん、こんなものしか出せないけど」
そう言いながら出したのはプリン。
弾力と柔らかさのバランスがちょうどよく、プルンとしていて、見るからに美味しそうだ。
「おおっと。これは譲特製の蜂蜜プリンじゃないか。相変わらずうまそーだな」
「ありがとう。もっとも飲んでばかりの兄さんの口には合わないだろうけど」
「別に俺だけが食べるわけでないからよ、気にするな」
そんな兄弟の会話を横目に、プリンを初めて見る白龍は目を輝かせている。
また、朔や景時も言葉にはしないが、一刻も早く口にしたがっている様子がうかがえる。
そして、譲にうながされ一同はいただきますの声とともにプリンを口にする。
こちらの世界にはない甘い味覚。
想像していた以上の味わいに舌鼓を打つ。
プリンを食べ終える頃、白龍が隣にいる望美にこっそりと尋ねた。
「神子、誕生日って、何?」
望美は白龍の目をし 1680