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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    遙か3・望美→将臣の話。

    いつか書くかもしれない話の一部。

    #将望
    willLookForwardTo
    #遙か3
    haruka3
    #遙かなる時空の中で3
    harukanaruTokiNoNakade3
    ##遙か3

    「よお、久しぶり」

    屈託のない笑顔を見せながら夏の熊野に現れた幼馴染。
    心の奥に小さな痛みを感じながら、望美はそんな彼に笑顔を向ける。

    「将臣くん、久しぶり! まさか、こんなところで会えるなんてね」

    そう、近所のコンビニで同級生と会ったのとはわけが違う。
    いくら京と熊野は関わりがあるといっても、戦乱のさなかゆえ今日から熊野へ訪れるには時として命を掛ける必要もある。
    もしかすると、ここでふたりが出会うのは深い理由があるのかもしれない。
    あるいは避けられない運命なのかもしれない。
    どんな事情であれ、今は将臣と行動をともにすることができるのが望美にはうれしかった。

    熊野で将臣と過ごす期間は思いのほか、長くなりそうだった。
    なぜなら望美たちも将臣も同じ場所を目的地としていたが、さまざまな障害により、たどり着くのが困難だったからだ。
    遠回りをすることにした先で滞在することになった勝浦。
    しばらくここに留まることとなり、自由時間を持つことができた。
    久しぶりに波の音を近くで聞きたくなり、望美は浜辺へ行くことにした。

    「よお、そこにいたのか」

    浜でしゃがみ込みながら波を見ていると、幼いころからずっとそばで聞いていた声が後ろから聞こえてきた。
    自然と胸がときめくのを感じる。
    それは、今まで毎日のように会っていたのに、この世界では会えないことが当たり前で会えることの方が奇跡だからだろうか。
    この世界に来てから二度の再会。そのたびに心が弾む。望美はそんな自分の気持ちに気がついていた。
    だからだろうか、かつては自然と将臣に話すことができたのに、今は何を話していいのかわからない。
    何気ない会話をしようにも、離れている時間が長くなるにつれ、共通の話題は少なくなる。
    離れているときに何をしているのか問いただしても、はっきりとした答えは将臣から返ってくることはない。
    会話の糸口が見えないこともあり、ふたりは一言も話すことなく、波の動きを見、波の音を聞いていた。

    「変わったよな、おまえ」

    先に口を開いたのは、将臣の方だった。

    「え?」

    三年も先にこの世界に来て、おそらく口にできないほどの苦労をしてきた将臣に言われるのは正直、意外だった。
    望美は将臣の瞳をじっと見つめる。
    かつては底抜けに明るい色を宿していたその瞳に、今はほんのりと陰が映っていることに気がつく。
    そして、そのことを知らないふりをするために、視線をそらす。
    すると、望美の耳に将臣の声が響く。

    「九郎に対して、キツイ言い方をしなくなったな」

    この場にいない八葉の名前。
    将臣と対になるもの。そして、滅多に顔を合わせることはないが、なにかと波長が合っていると感じさせるもの。自分や譲とは別の種類だが、将臣は九郎に対し気を許しているのがわかる。
    そして、望美は将臣の言葉に心当たりがあるのを感じる。
    言われてみればそうかもしれない。
    出会った頃は、九郎の言動ひとつひとつに反発していた。
    九郎の真っすぐな性質はときには、いや、しょっちゅう望美の心の中では反発の気持ちへと変化していた。
    そのため望美も九郎へのいら立ちや不満をすぐさま形として表現した。
    そして、さらに九郎が反撃する。
    それが望美が京の世界にやってきてからの当たり前の一部だった。
    しかし、最近はいちいち反発することは少なくなった。
    将臣はそのことを言いたいのであろう。
    すると、望美の耳に予想外の言葉が入ってくる。

    「あいつのこと、好きなんだろ?」

    そのとき、望美の心にひびが入るのを感じた。
    自分が好きな相手にはおそらく言わないであろう言葉。
    そう望美に話しかける将臣の瞳に嫉妬の陰を見つめることはできなかった。
    そして、そんなセリフを投げかけると言うことは、おそらく将臣にとって望美は恋愛対象ではないということだろう。彼の中では望美は幼馴染の域を超えないのだろう。
    もしかすると、この世界に来てから、既にいい人を見つけたのかもしれない。でないと、三年間もの間、無事で過ごせるようには思えない。
    しかし、何をどう捉えたらそういう解釈になったのだろう。
    ちょっと態度を改めたくらいで、そんな風に思われるのは、正直心外であり、そして悲しかった。

    「俺といるときと違って、おまえ、九郎といるときは気を遣っているだろう?」

    確かにそうかもしれない。
    春に比べると九郎に対して、気を遣うようになった。言葉遣いにしても、日頃の言動にしても。
    しかし、それは九郎相手だけではない。
    朔にしても、白龍にしても、もちろん他の八葉に対してもだ。
    ほんの一時をともにするだけであれば、先のことを考えなくて良いゆえ、ある程度本性のまま行動する。
    しかし、これからも長く行動をともにすることがあると最近は実感するようになってきた。だからこそ、相手に気を遣い、あまり横柄な態度にしないようにしている。

    「あいつと一緒にいるときのお前、女の子しているって感じだぜ?」

    将臣にはそう見えるのだろう。九郎と一緒にいるときの自分は。
    九郎に対し恋愛感情を持っているとかではなく、将臣と離れている時間に自分も成長した証なのかもしれないのに。
    そんな望美の気持ちに気がつかないであろう将臣は望美の背中をトントンと叩く。

    「うまくいくといいな、おまえの恋ってヤツ」

    そのときに向けられた笑顔は望美が知っているいつもの笑顔と変わらないはずであった。
    しかし、なぜかその眩しさが今回ばかりは望美の気持ちに影を落とす。
    そして望美に背中を見せて将臣は去っていく。
    こっちを振り向くこともなく振られた手は自分に気持ちが向けられていないことを暗に示しているような気がした。

    「そんなんじゃないよ、将臣くん……」

    最後の方はほとんど言葉にならなかった。
    そして、望美は自分の目から涙が零れだしているのを感じた。
    将臣の誤解を解く日は来るのだろうか、それとも将臣の勘違いはそのままなのだろうか。
    運命の行き先は見えない。
    しかし、今は心をゆっくり沈めたかった。
    幼い頃から聞いている波の音が今は望美の心を優しく慰めてくれる。
    そして、海の青さも。
    青色が橙色に変わり、そして、漆黒へと変化するまで、望美は浜辺にいた。
    ずっとずっと。

    ただ、その海の青さを忘れることができなかった。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
    1381

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    心の奥に小さな痛みを感じながら、望美はそんな彼に笑顔を向ける。

    「将臣くん、久しぶり! まさか、こんなところで会えるなんてね」

    そう、近所のコンビニで同級生と会ったのとはわけが違う。
    いくら京と熊野は関わりがあるといっても、戦乱のさなかゆえ今日から熊野へ訪れるには時として命を掛ける必要もある。
    もしかすると、ここでふたりが出会うのは深い理由があるのかもしれない。
    あるいは避けられない運命なのかもしれない。
    どんな事情であれ、今は将臣と行動をともにすることができるのが望美にはうれしかった。

    熊野で将臣と過ごす期間は思いのほか、長くなりそうだった。
    なぜなら望美たちも将臣も同じ場所を目的地としていたが、さまざまな障害により、たどり着くのが困難だったからだ。
    遠回りをすることにした先で滞在することになった勝浦。
    しばらくここに留まることとなり、自由時間を持つことができた。
    久しぶりに波の音を近くで聞きたくなり、望美は浜辺へ行くことにした。

    「よお、そこにいたのか」

    浜でしゃがみ込みながら波を見ていると、幼いこ 2600

    百合菜

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    「よお、久しぶり」

    屈託のない笑顔を見せながら夏の熊野に現れた幼馴染。
    心の奥に小さな痛みを感じながら、望美はそんな彼に笑顔を向ける。

    「将臣くん、久しぶり! まさか、こんなところで会えるなんてね」

    そう、近所のコンビニで同級生と会ったのとはわけが違う。
    いくら京と熊野は関わりがあるといっても、戦乱のさなかゆえ今日から熊野へ訪れるには時として命を掛ける必要もある。
    もしかすると、ここでふたりが出会うのは深い理由があるのかもしれない。
    あるいは避けられない運命なのかもしれない。
    どんな事情であれ、今は将臣と行動をともにすることができるのが望美にはうれしかった。

    熊野で将臣と過ごす期間は思いのほか、長くなりそうだった。
    なぜなら望美たちも将臣も同じ場所を目的地としていたが、さまざまな障害により、たどり着くのが困難だったからだ。
    遠回りをすることにした先で滞在することになった勝浦。
    しばらくここに留まることとなり、自由時間を持つことができた。
    久しぶりに波の音を近くで聞きたくなり、望美は浜辺へ行くことにした。

    「よお、そこにいたのか」

    浜でしゃがみ込みながら波を見ていると、幼いこ 2600

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    百合菜

    PAST遙か6・有梓
    「恋心は雨にかき消されて」

    2019年有馬誕生日創作。
    私が遙か6にはまったのは、猛暑の2018年のため、創作ではいつも「暑い暑い」と言っている有馬と梓。
    この年は気分を変えて雨を降らせてみることにしました。
    おそらくタイトル詐欺の話。
    先ほどまでのうだるような暑さはどこへやら、浅草の空は気がつくと真っ黒な雲が浮かび上がっていた。

    「雨が降りそうね」

    横にいる千代がそう呟く。
    そして、一歩後ろを歩いていた有馬も頷く。

    「ああ、このままだと雨が降るかもしれない。今日の探索は切り上げよう」

    その言葉に従い、梓と千代は足早に軍邸に戻る。
    ドアを開け、建物の中に入った途端、大粒の雨が地面を叩きつける。
    有馬の判断に感謝しながら、梓は靴を脱いだ。

    「有馬さんはこのあと、どうされるのですか?」
    「俺は両国橋付近の様子が気になるから、様子を見てくる」
    「こんな雨の中ですか!?」

    彼らしい答えに納得しつつも、やはり驚く。
    普通の人なら外出を避ける天気。そこを自ら出向くのは軍人としての役目もあるのだろうが、おそらく有馬自身も責任感が強いことに由来するのだろう。

    「もうすぐ市民が楽しみにしている催しがある。被害がないか確かめるのも大切な役目だ」

    悪天候を気にする素振りも見せず、いつも通り感情が読み取りにくい表情で淡々と話す。
    そう、これが有馬さん。黒龍の神子とはいえ、踏み入れられない・踏み入れさせてくれない領域。
    自らの任 1947