オメガバ狂聡11
曲調に合わせてちかちかと色彩を変えていたパーティーライトが、ひとときカラオケボックス内を紅色に染める。本日何度目かの咆哮を聞き流しながら、岡聡実はグラスに刺したストローに吸い付いた。マイクを握る成田狂児が、十八番である紅を気持ちの悪い裏声で熱唱している。先程提案したメロディキーを1オクターブ下げる事で彼の音域に合わせる戦法は、一度は歌ってみた結果、どうやらお気にめさなかったようだ。
しょうもな。
せっかく考案した打開案を無下にされた聡実は、やさぐれた気分でストローの先端を齧りつく。狂児の『紅』への思い入れは強い。それは自分が何をしても無駄なのでは? と思わせる程で、聡実はすっかり拗ねてしまっていた。
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