魔法少女スグツバ その2第○○○話「カキツバタ 絶体絶命のピンチ!?」
悪の組織の使い魔たちが今まさに目の前で暴れている。それを見たカキツバタは冷や汗の吹き出す拳を握り締めた。
どうする…どうすれば…
いつもであればすぐにでも路地裏に入り込んで魔法少女に変身し、戦っていたであろう。しかし、しかしだ。問題は目の前で「わやじゃ…」と腰のすくんだスグリである。
今日は、スグリの姉のゼイユの誕生日が近いからとか何とかで、なぜかスグリと二人でショッピングモールに来ていた。こんな奇跡みたいなデートの日にピンポイントで襲ってくるなんて、なんと空気の読めない使い魔か。いっぺん地獄に堕ちろ。
なんて、現実逃避をしている場合ではないのだ。鞄の中に隠し込んだカイリューの入ったモンスターボールが揺れている。でも、スグリにバレるわけにはいかない。自分がスグリが片思いしている件の魔法少女であることなんて。
スグリは、男のカキツバタが魔法少女の正体であるなんて知ったら、どんな気持ちになるだろう。
幻滅する?がっかりする?落ち込む?
どう考えたって、プラスの思考に傾くわけがない。
でもしかし、ここで一般人のカキツバタとしてふるまったとしたらどうなる。このショッピングモールが目も当てられぬことになるのは目に見えているし、それに怪我人が出てしまうかもしれない。
もしスグリが怪我なんてしてしまったら…
ごくん。自分が唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。決断の時は刻一刻と迫っている。
「…っ…スグリ!」
「な…なんだべカキツバタ…?」
震えるスグリに向かって叫ぶ。
もしばれてしまっても、ミジンコに転生することになったとしても、スグリに今以上に嫌われることになったとしても。それでも、スグリをこの場で守ることができるのなら。
どうせ自分なんて嫌われているに決まっているのだ。凶が大凶に下がったところでダメージなんてたかがしれている。それなら。それならば、カキツバタが下すべき決断は彼の目の前に当たり前のように横たわっていた。
「お前はこっから逃げろ」
「何言ってんだ!!カキツバタも一緒に行くべ!」
「悪ぃが…おいら…忘れモンしちまってよ。それ取りに行くから」
「今そんなこと言ってる場合じゃないべ!早くしないと…っていない!?」
スグリに咄嗟に思いつく限りで一番もっともらしい言い訳をして、返事も聞かずにカキツバタは駆け出した。その手にはモンスターボールをしかと握りしめて。
違うんだよォォ!!スグリが魔法少女のことが好きなのは、カキツバタと重ね合わせてるからなんだよ!本当に好きなのはカキツバタなんだよぉ!
スグリィ!今すぐ!!カキツバタに本当のことを言えぇぇぇ!!!