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    夜々

    ツイログとワンクッションと裏垢ss置き場。
    @yaya3_kamone

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    夜々

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    眠れないオズのはなし。

    無題此処はひどく暖かい。


    そこに、その人はいた。
    見慣れた顔、見慣れた声で私を呼ぶ。

    オズ。お前は本当、しょうがない奴だな。

    彼は私のよく知る、少し困ったような笑顔を浮かべた。
    貴方に呼ばれるだけで心が暖かくなる。
    「そんな風に育てたのは貴方ですよ。」
    皮肉めいたように返すと、彼は更に目を細めた。
    ずっと私がこの人を守るのだと。
    この拾われた命を、例え失ってでも守ると誓った。
    それ程に、私の中で貴方の存在は大きかった。

    …そんなんで俺がいなくなったらどうするんだ?

    ふと、そう言われて私は固まった。
    貴方がいなくなってしまったら私は一体どうするのだろう。
    貴方のいない世界で、私はどう生きていけばいいのだろう。
    ……深く考える事などないじゃないか。その時は、私も
    言いかけた言葉は、空を切る音に遮られた。

    「 ?」彼の名を呼ぶも、反応はない。

    赤い 花 がゆっくりと胸元に咲いていく。

    私は目を見開いた。
    貴方の口端から滴り落ちる 赤。
    少しずつ、足元へ水溜りを増やしていく 赤。
    苦しげな表情を浮かべた貴方は、掠れた声で私を呼ぶ。

    「オズ」

    支えようと手を伸ばすも、間に合わず。
    貴方は其処へ崩れ落ちる。
    抱えた身体は冷たく、息をしていない。
    私はただ、声にならない叫びを吐き出すしかなかった。

    「オズ!」

    先程とは違う、己を呼ぶ声にハッと目を開く。
    そこには心配そうな顔をした女性が立っていた。
    「……ハート…?何故…。」
    「何故って…貴方、10分仮眠っていつもきっかりとるのに、今日は戻ってこないから何かあったのかと思って見に来たのよ。そしたらすごいうなされてたから…」
    そうだ、私は仕事の合間に仮眠を取ろうとこの仮眠室で休んでいたんだった。
    …夢。ああ、またこの夢だ。
    冷や汗で全身が湿っぽく気持ち悪い。

    私は何年もずっと同じ悪夢を見ている。
    貴方を失ったと知った、あの日から。

    「…悪夢でまた眠れてないの?医者は?」
    「医師に診てもらった所で眠剤が増えるだけですよ。」
    薬で無理矢理身体を休ませる毎日だが、効きはいつか薄れていく。その度に別の薬に変え、増やし、眠るを繰り返してきた。
    これは根本的な問題だと医師は言う。

    貴方がそれを受け入れない限り、解決はしない。
    辛いだろうが…その人の死を受け入れて、己を許さないと、夢は罰のように貴方に付き纏うよ。それこそずっとだ。

    受け入れる?許す?
    罰と言うなら甘んじて受けよう。
    これは贖罪だ。

    「…お見苦しい所をお見せしてすみません。仕事、戻りますね。」
    「待って。」
    ベッドから立ち上がろうとした所を、彼女に押さえつけられた。長い指先が私の頬を撫ぜる。
    「…忘れさせてあげようか?…嫌なこと、全部塗りつぶしてあげるよ。」
    輪郭をなぞり、首筋を這う指。
    彼女の瞳は熱を帯びている。
    小さく溜息を吐いてその掌を無造作に掴み取り、そっと退けた。
    「……申し訳ありませんが、私では貴女を満足させる事はできません。…そのお気持ちだけ、頂きますね。」
    掴み上げた掌の甲へ口付を落とし、彼女に軽く会釈をしてベッドから降りる。
    無造作に己の荷物を拾い上げ、仮眠室を後にした。

    「…相変わらずつれないのね。」
    静まり返った部屋に大きな溜息と彼女の独り言。…と思った矢先
    「ハートちょっとさあ〜今のはないんじゃない?いやーだって、オズの弱味につけこんでるじゃん?俺はそういうのよくないと思うな〜」
    別のベッドのシーツから顔を出す、赤いフードの男がいた。横になりながら頬杖をついて彼女を見ている。
    「うわ、最悪…いたのレッド…」
    「え〜いましたけど?ここはみんなの仮眠室だし?大体こういう所でおっ始めるのもどーなの?節度守ってくんない?」
    「うっさいわね。…どうせフラれると思ってたしいいじゃない。」
    「ふーん、ジョークってやつ?ま、それ笑えないけどな。」
    「私だってそんなこと、わかってるわよ…。」

    3人は同僚だが、仕事上お互いの詮索はしない。

    「ただ、あのままだとオズ…あっという間に死にそうだから。」
    「…そうだなぁ。それはすっげえわかる。」

    彼の目に映っているものが何かは知らない。
    だがあの危うさと、内に潜む狂気は
    二人ともわかってはいる。

    先の事は未だわからない。
    これは、よくある誰かの話のひとつ。
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