運命の相手とは 🌙🌳「好きだよ、マルチィ」
医務室でのいつものお茶会
いつも通りのコカを飲んでお菓子を食べて仕事の話やちょっとつまらない世間話
いつも通りだった彼がこんなことを言うまでは…
「……なんで俺に言ってんすか言う人、間違えてますよ」
持っていたココアを飲んでドクターに目を向ける
そもそもドクターには想い人がいて俺はその記憶を知っているから協力して探し出すと言う話だったはずなのになぜ俺に告白しているんだこの人
「間違えてないよ、だって僕の探している想い人ってのは君のことだもん」
衝撃の事実に飲んでたココアが口の端から垂れそうになった
けど、そんなの…急に言われてもこっちはどうしろと言うんだ
確かにドクターからの話をすり合わせたら納得するところは多いから事実なんだと嫌でも思わされるが告白されても今の俺にはそう言ったことはわからないしドクターはただの仕事の先輩としかいえないのだから
「申し訳ないですがお断りします」
「え〜応援してくれるって言ってたじゃないかぁ」
「それは俺以外の人の場合ですよ、なんで進んで応援しなきゃなんですか…」
「まぁ、断られるのは想定内だけどねぇ」
「でしたら早く別のお相手を見つけては?」
「うふふ、僕がそう簡単に君のことを諦めると思っているのかい?」
「……勝手にどうぞ、ココアうま…」
そのあとは特にこれ以上は話すこともなくお茶会はお開きに
だがこの日から顔を合わせるたびに口説いてくるようになった……
「おはよぉマルチィ、一緒に朝食食べよぉ」
「そっちじゃなくてこっちだよぉ〜」
「ねぇ、今度のお休み一緒にここ行かない?」
「どこにいくの〜待ってよ〜」
あの日以降話すことやスキンシップの数が異常に増えた
彼は本気で諦めないつもりらしい
最近はこんな状態が続くせいで感覚が麻痺してきている気がする
なぜか嫌だと思うことはないのだがどう反応したらいいのかよくわからないものだ
さて今日は久々のオフゆえに今は近くの市場を見にきた
市場はたくさんの人で賑わいがあった
最近忙しかったから新しい本や必要なものなどを買った
本当に忙しくあったひっきりなしに出動依頼が来るものだから最後に休んだのがいつだったかもう覚えていないくらい忙殺されていた気がする
そんなことを考えながら歩いていたら美味しそうなお菓子を見つけたので隊へのお土産に一つ買っていくことにした
……ふと隣のコーナーに目が映った
それは少し遠くの地域で取れるらしいコーヒーの豆だった
あまり数が出てないらしくく今回は久しくこの市場に下ろされたようだ
そう言えばいつかのお茶会の時にドクターがここのコーヒーを飲んでみたいなとぼやいていたな……
……いつもお世話になってるしお茶会も準備してもらってばっかだし…
日頃のお礼がてら買っていくか…
豆とお菓子を一つずつ買って少し早歩きで基地に戻った
何だか少し浮かれているような気もした
基地に着くとドクターがどこかに向かっているところを見かけた
お土産のこともあり声をかけようと後を追いかける
この時少し脅かしてやろうなんて考えて忍足で追いかけたことを後悔するだろう
角を曲がったところで声をかけようとしたら誰かと話をしているドクターの姿があった
俺は慌てて壁に貼りつて隠れた、なんの話をしているのだろうと思い音を立てぬように耳を傾ける、まるで盗み聞きをしているようで少し罪悪感が湧いたが今動けば確実にバレると思った
角からちらりと二人の姿を見た
ドクターと一緒にいたのは別部隊でも人気のマドンナさんだった
俺よりも発色の良い赤色の髪、少し筋肉質な良い体、知識も多く現場では引っ張りだこでよく別部署の人が話していた人気の方じゃん…
前にレンジャーが話してたけど結局隊長の方が素晴らしいとか言ってたな
そんなレスキュー隊のマドンナさんがあのドクターとどう言った関係なのだろうか?
「パピヨンさんお呼びだてして申し訳ない」
「構わないですよぉ、それで話ってなんですか?」
「単刀直入に言わせていただく、私は君のことが好きだ結婚を前提にお付き合いを願いたい」
凛とした声で真っ直ぐに放たれた告白
ドクターの前に伸ばされた手
風に靡く赤髪は彼女をより凛々しく見せている
ドクターじっと彼女を見ていた、驚くこともなく
差し出された手にドクターの手がゆっくりと伸びて重なろうとした
…気づいたら俺は荷物を持ってあの場から逃げていた
痛い、どうしてだろう…どしてかわからないけど胸が締め付けられるような痛みがする
なんだこれ?ズキズキと胸が痛い…あの光景が頭の中に焼き付いて仕方がない…俺には関係のないことじゃないかドクターがあの人の手を取ったて、あの人と付き合ったって俺には全く関係ないむしろもう纏わり付かなくなるなら……
息を上げ走り疲れた足がゆっくりと止まっていく
痛む胸を抑えて荷物を地面においてその場にしゃがみ込む
ストンと何かかがそこに収まるような感覚がした
考えたくなくって認めたくなくってずっとずっと目を背け続けていた
ずっとドクターには好きな人がいてその想いが一途で決して他には振り向かないものだと知っていたから心の奥底に何重にもして沈めていた
あの時最初は嬉しかったけど次第に俺はそれは違うと思った
ドクターは変わらないと言っていたがそんなことはなかった
彼女…私はお喋りでめんどくさがらず誰にでも笑顔でそれはまるで太陽のようだった、その上いつもドクターのことを考えている後輩でドクターといる時の私はいつも嬉しそうで全てが逆だった
私と同じだったのは見た目と名前のみ…ドクターが本当に好きなのは俺じゃなくて私だった、だからドクターが俺を好きになることなんてない私と俺を重ねて見ていたにすぎなかったんだ
ドクターが本当の意味で俺を好きになることはこの先万一あり得ない話だとういうことさ
けどドクターは何度も俺に声をかけかまってきた
その度に何重にもして沈めていた想いが少しずつ浮上していた
だから、だから俺は愚かなことに少し期待してしまったのだ
そして今更手遅れだということに気づいた
「……好きだったのか俺は」
「ルーキーちゃんオカエリデース!」
「むっ、帰ってきたのかマルチィ氏」
休憩室に向かう最中パイロットさんと発明家さんにあった
「今戻ったところですよ、それと皆さんにお土産にお菓子とコーヒー豆です…あとで皆さんで食べてください」
それだけ渡してさっさと自室に戻った
「マルチィ氏、今朝は元気だったはずだが何やら疲れているように見えたな」
「…ミーには少し目の周りが赤く見えた気がするデス」
このお土産のコーヒー…以前パピヨンが話してた気がシマース
イやな予感がしますね…あとでパピヨンに報告デスネ
あれから1週間とにかく仕事をこなしていた
書類、訓練、実践、書類、救助犬との訓練、点検、業務………
あの日からドクターとは仕事以外では関わらないようにできうる限り一人にならないように他のメンバーといるようにした
ふと時間が空いてしまうとあの時のことを思い出してしまうからそんな隙も作らないよいうにとにかくし動き続けた
こんな私情で周りに迷惑をかけるわけには行かない
だからいつも通りにタスクをこなして、こなして、こなして…
「マルチィ」
呼ばれた方へと振り返るとそこにはドクターがいた
しまった…部屋に戻るだけだから一人になっていたのが迂闊だった
適当に誤魔化して早く離れよう
燃え上がるようなあの想いをぶり返してしまう前に
「何かようですか?俺行かなくちゃなんですけど…」
「大丈夫ちょっと聞きたいことがあってね、最近君が忙しそうだったから今しかないと思ってね」
「いやまだやることあるんでできれば巻きでお願いします」
「そっかぁ…じゃあ聞くけどどうして僕を避けてるの?」
「避けてる?なんのことですか…確かに最近忙しかったからかもですが」
「そうだね、それも君が必要以上にだよねそれ?それに休憩の合間も一人にならないように僕以外の誰かしらを隣に置くようにしてたし、医務室にも来なくなったしね、さすがとしか言えないよ」
「たまたまじゃないですか?じゃあ俺もう行かないとなんて…」
こうを返してその場から逃げようとしたがぐいっと引っ張られその場から動けなくなった
腕はドクターの手によって逃がさないと言わんばかりに掴まれていた
医者にしては少し力が強いな…
振り解くのは無理そうだなとわかる
それに笑っているようで目が笑っていないんだよな全然
そこまでしてなんで俺に構うのかなあんたは…
「あの離してもらえます?行かないとなんで」
「どこにいくんだい?仕事も落ち着いて今はみんな自分のことをしているから君を呼ぶ要件もないはずだよ、今君がフリーなのはちゃんとわかっているんだからねぇ?」
「………あなたには関係ないことだ俺の個人の問題ですから」
「好きな人に避けられるのは良い思いじゃないからね、僕でよければまたお茶しながらでも相談に乗れるしそれに」
「あら?パピヨンくんじゃないどうかしたの?」
あの日ドクターに告白した赤髪のマドンナが立っていた
近くで見てもなおのことみんなが言うだけのことはある
この人と付き合えるなんてこれはきっと誰しもが喜ぶだろうな
だからドクターだって……
痛い…二人を見ているとあの時のことを思い出して焼けるように胸が痛くなる
早く、ここを離れたい、込み上げてくるこの気持ちが出てしまう前に早く!
「こんにちはぁベールさん」
「今日も可愛らしいわね、よければこの後食堂でおしゃべりでもしない?」
「申し訳ないけど今手が離せないんだよねぇ〜それとそう言うのはお断りしてるかなぁ」
「あらいけずね、手が離せないってもしかしてそちらの子のことかしら?…なんだか離して欲しそうな顔をしているけど?」
「そんなことないかなぁ、これから僕と二人でちょっと話し合わなきゃいけないことがあってね」
「けどその子あなたと話し合いをするのは嫌みたいですわよ?よければ私に譲っていただけるかしら新人さん?」
「……君さ…」
「……俺はもう部屋に戻るんでドクターのことは好きにしてもらって構いませんよ…それじゃあ」
「ちょっとっ!」
彼女の登場で少し力だ緩んだのを狙って掴まれた腕を振り解き早足でその場を去り自室へと駆け出す
ドクターの声と彼女の声がしたが振り向くことをせずただひたすらに…何も考えないように、彼女のこともあの日のこともドクターのことも…
どれだけ考えないようにしてもこの胸をズキズキと痛みだけがその主張を止待ってくれない
部屋に入ろう…一人になって少し立てば落ち着くはずだ
ドクターだって今頃彼女とおしゃべりしているんだろうし…
ドアノブを握りしめた手に雫が落ちる
あれ?……なんで俺……まぁいいや…
ドアノブを引いて自室に入……え…?
白衣を着た手が俺の腕を掴んで一緒に部屋に傾れ込んでくる
なんでいるの?だって彼女と一緒じゃ…
「マルチィ!」
「なん…で…彼女は…」
「え?そんなの置いてきたに決まってるじゃないか」
「……置いてきたってドクターなんで…」
「そんなの君と話がしたかったからだよぉ、それ以外あり得ないでしょ」
「っ俺はあんたと話すことなんてないんですけど離してもらえますかこの腕!」
どうにか振り解こうとしたがさっきとは違って強く握られた手は簡単には振り解けなく
そのまま力に負け彼の腕の中に引っ張られてしまう
「君がなくても僕にはあるんだよぉ…二度めはないからねマルチィ」
彼の腕の中から出ようにも掴まれた腕に腰に回された手はそれを容易に許さないと言わんばかりに阻んだ
離れることができず今この顔を見られるのは嫌だ、きっと今自分は酷い顔をしているに決まっている
「ねぇ、どうして僕と話してくれないの?」
「たまたま忙しくてッ…」
「嘘だよね?さっきの君を見て僕はそうじゃないと思うんだよ、…教えてマルチィ」
だめだ、これ以上この人の前でボロは出したくないのに考えがまとまらない
腹の底から色々なことが込み上げてきて溢れ出てしまう…
「離れて、優しくしないで、離せっ‼︎…彼女のところに行けばいい‼︎ヒック……さっさと行け!……ズッ……嘘つき…」
ジタバタとしてもドクターの腕の中からは出れず泣き崩れていく…
早く彼女のところに行ってしまえ、もう俺のことなんて放っておいてくれ、あなたの好きはどうせ俺みたいなやつへの慰めだったのでしょう?さっさと彼女のところで幸せになれば良いじゃないか、もう苦しくて苦しくて息が上手くできない、お願いだからあなたの温もりもその声も…もうこれ以上俺あなたを感じさせないであなたの存在だけが俺の中で大きくなってしまう…
「僕は君から離れる気なんてこれっぽっちもないよぉ、それに何か勘違いしてないかな?」
「うるさいっ、聞きたくないです!やめろ、離せ!」
話したくない聞きたくないどれだけ争おうと俺を抱き寄せるその腕は緩む気配がなかった
抱き寄せる力を強くして彼はそのまま話し続ける
「あのねマルチィ彼女と僕は別に付き合ってるわけではないんだよぉ?もう関わらないでって言ってきたしね」
ドクターは何を言ってるのだってあなたはあのマドンナなの手を取ったのに…どうして俺に嘘をつくの?
「……なんでそんな嘘をつくんですか彼女の告白の時彼女の手を取っていたじゃないか!!あなたはただ俺を憐れんで好きだとか言っていただけでしょ‼︎」
やっぱり俺には無理だったんだ恋も愛も私のようにはできない
あの時俺自覚したドクターへの思いも何もかも全部吐いてしまいたい
もういっそうの事全て吐いてしまって…そしたらこの人だってもう俺に関わらなくなるかもしれない
もうこの人に嫌われた方がスッキリしてこの後の人生楽なのかも
あぁ、俺はいつからこんなふうに考えるようになったんだっけ…
効率悪いな…
「アンタなんて嫌いだ、大嫌いだッ、アンタが好きだったのは俺じゃなくて私であって俺じゃないッ、お情のアンタの言葉なんて聞きたくないッ…いつまでも付き纏ってしつこいし何度もお茶に誘ってきたりして変に期待させるようなことはするし…けど結局アンタに取って俺はただの暇つぶしにしか過ぎなかったんだろ!嫌い嫌い嫌いだ!こんな苦しい思いをしてまでアンタに振り回されるのはうんざりなんだよ‼︎……仕事はちゃんとやるからもう俺に構わないでくれ…」
全て吐いた、今まで…あの日からずっと溜まっていた苦痛のようものを全てドクターに言った…今一体彼はどんな顔をしているのだろう…
ここまで言えばもう俺のことは離すだろうと抜け出そうとドクターの肩を押してみる……がなぜか緩む事なくいまだに俺を中に閉じ込めている
なんでと声を出そうとするとそれを遮るようにドクターが喋り出した
「マルチィ…今僕ねすごく嬉しいく思ってるけどその前にまずちゃんと誤解を解かないとね…まず君は多分最後まで見ていなかったんだ、僕は彼女の手取らずにキッパリ断ったんだよ、僕には運命の相手がいるからお断りしますってね…まぁ、それでも彼女諦めが悪いのかあぁしての僕の前に現れてくるんだよさっきみたいにね…あまりにもしつこかったからちょっと脅して君を追いかけてきたんだよ」
「こ、とわった…?……なんで…だって彼女ほどの人なんで…」
断った……?見た目もドクターの好み通りだったし中身だって優秀だって……
「彼女がいくら優秀でも僕は君にしか興味ないからどうでも良いんだよね、もちろんシェパード隊のみんなは好きだけどそれ以上に僕に取っては君のことが大事なんだ……それに君の思いの丈がこんなところで聴けるなんて思いもしなかったよ、いつから苦しかったの?」
「……あなたがあの人から告白されてるところを見てから…ずっとです」
「正直確証はないけどそうだったら良いなって少し浮かれているんだ、まだ苦しいかい?」
気づけば胸の苦しみ治って息が楽になっている…ドクターの手が何度も何度も背中を撫で下ろしていく、それがひどく心地よくて安心するような感じがした、張っていた気も緩んで力が抜けてしまいドクターにもたれかかってしまう
「今は…痛くないです…なぜ………さっきまであんなに痛かったのにまるでなかったかのように痛くない…」
「そっかぁ〜……僕ねさっきの話を聞いてすごく舞い上がってるんだ、君が僕に振り回されてその上で君は僕に期待をしていてくれたって所それにさっきまであった痛みが消えたってのに僕今すごく自惚れているかもしれないんだぁ」
彼はとても嬉しそうな顔で俺の方を覗き込む
俺さっきもまであんなに酷いことを言ったのになんでこの人はこんなにも嬉しそうなんだ?
「なぜそんなに嬉しそうなんですかドクター……俺、貴方に酷いことを言ったはずなのに…」
「なぜって僕のことを意識して貰おうとアプローチしていた子がようやく僕のことを好きになってくれたんだから喜ぶに決まってるじゃないか?」
「ッ////…けど、俺はあなたが好きだった頃の私ではないんですよ?」
「確かに最初の頃とは180度違うけどそれでも君はマルチィなんだ大元は何も変わっていない優しくて無茶ばかりする僕の可愛い人」
「……俺は愛だとかそういうのはわからないんですよ?」
「うふふ、大丈夫ちゃんと手取り足取り最後まで責任を持って僕が教えるから」
「…私のようにできるか自信もないです」
「君が彼女のようにならなくても良いんだよぉ、君は君なんだから」
「……俺のせいで迷惑をかけるかもしれませんよ?」
「そんなの些細なことだよ、一緒に頑張っていけば大丈夫だよぉ」
「それに俺……普通ではないんですよ?巻き戻しやこの力だって……」
「そんなの承知のうえだよぉ、その能力のことも色々調べたりして向きあっていけば良いんだから…まぁ、僕的には怪我ばかりしてきて心配だからあまり使ってはほしくないけどねぇ」
「…俺は現場に出ることも多いです怪我だってしましもしかしたら死んでしまうことだてるんですよ?」
「わかってるよぉ、けどそんことは絶対にさせないどんな怪我でも僕が治してあげるから、もちろん君だけじゃなくて隊のみんなもだよ」
「…えっと……あの……」
ほ、んとうに俺で良いのだろうか……後悔はしたりしないのかな…
不安で不安で仕方がなかった、友人や仕事仲間とは違った関係に
自分には縁のないものと思っていた関係を持つということが底知れぬほどに不安で仕方がないのである
本当に?本当にこんな俺で良いんですか?仕事しか取り柄がない俺…オレで…
恐る恐る彼の背中に腕を回して肩の上に顔を埋める
「今無理に言わなくてもいいよぉ〜聞きたいことや不安なことがあったらまたその時に聞いてくれたら良いからねぇ」
彼の手が優しく背中を撫でてくれる
今はただその心地よさだけを感じられたら良い…
「マルチィ、好きだよぉ……僕の愛おしい人、どうか君の言葉で教えてもらいたいなぁ」
あの日からずっと聞いてきたこの言葉
いつもなら軽く流していた言葉は今はなんだか少しだけ嬉しいなと思うような気がした
本当は全部捨てるつもりだった…そうしたらまたいつものオレに戻れるから
けど今までみたいに捨てなくて良いんだ…これだけはドクターへのこの想いだけは捨てなくて良いんだ
「俺…も///……ドクター…のことがす、すき…です////」
顔がすごく熱いあと耳も///
ゆっくりと肩から顔を上げてドクターの顔を見る
「ようやく僕のことを見てくれたねマルチィ?」
すごく嬉しそうに微笑んでいる…
私と一緒だった時のドクターのあの嬉しそうな顔だ
俺でもこの人はこんなに喜んでくれるんだ…あぁ、すごく嬉しいな///
「うふふ、ねぇこの間バーナードから聞いたんだけど休憩室に置いてあるコーヒーって前に僕が君に話したやつってほんとかなぁ?」
「あ、あれは……そう…です、元は貴方が以前飲みたいと言ってたので買ったんですが…その…あの告白の後で渡せないと思って一人で飲むのもだったんで皆さんに買ったお土産と一緒に渡したんです…」
「そっかぁ…それじゃあ後でそのコーヒー飲みに行こうか」
「え…今から飲みに行かないんですか?」
「今からだと眠れなくなっちゃうからダメだよ」
寝る?なんで?だってまだお昼頃だし…それにまだ眠たくもない
もう少しだけドクターと………何を言ってるんだ
「まだ寝るには早い…と思いますよ、それにまだ仕事が…」
「まさかまだ仕事をするつもりなのかな君は?いつもよりクマもひどいしここ最近早起きだったのもちゃんと寝れてたのかな?」
両手で顔を包まれ目の下のクマをなぞられる、あったかいな…
確かに最近少し徹夜したり数時間寝てもすぐ起きてしまうのもあって朝早くから起きてたりしたけど…
そんなにクマ酷かったのかな…あまり鏡を見たりsてなかったから俺が気づいてなかっただけなのかも知れないが
「……ちょっとだけですよそんなにひどくないですしそれに…っぁ〜〜〜〜……あっ…」
「ほら、体も限界みたいだからねベットにいこっかぁ〜」
「まだ大丈夫です!わっ⁉︎」
反論しようとしたが有無も言わさず横抱きにされベットの方へ運ばれてしまった
ゆっくりとベットに寝かされる…今眠って起きた時これが夢だったらなんて考えると少し怖いなと思う
掛け布団をかけられドクターが離れようとした…
「マルチィ?」
気づいたらドクターの白衣の裾を握っていた
しばらくして沈黙が続いた、俺は尾間自分が何かしたのかをようやく理解してすぐさま手を離した
「ご、ごめんなさい!あの、えっと…その…///」
「うふふ、もしかして寂しくなっちゃったのかな?」
「……い、いえ…ただ…もしこれが夢だったらと思ってしまって……すみません」
「そっかぁ……そうだねだったらこうしちゃおっか、失礼するね」
そういうとドクターはベットに上がってきてかかっていた掛け布団の中に入ってくる
俺はドクターの腕の中に納まるように横になっていた
さっきはそれどころじゃなかったから気にしていなかったがアルコールと少しだけ何かの薬の匂いが混ざったような香りがしてそれでいてとてもあったかくてなんだかすごく居心地が良くて……だんだん瞼が重くなってっきた…
「こうしておけば起きた時僕がいるから夢だなんて思わなくて済むでしょ?起きたら一緒にコーヒー飲みに行こうかぁ、それから会えなかった間の君のことを教えてねぇ、もちろん二人きりでだよ?」
「は、…ぃ…これでいなかぁっ、たら許しません…からねぇ…どく、たー……」
「うふふ、君から離れる気はないよ…おやすみマルチィ」
「おやすみ、なさい……ぱぴよん…さん……」
腕の中から小さく寝息が聞こえてくる
まるで安心しきった幼子のように眠る彼女の額に静かにキスをする
くすぐったかったのか僕の胸に擦り寄ってくる
ゆっくりと彼女の頭を撫でてあげると小さく笑みを浮かべていた可愛いなぁ……
まさか彼女に告白されていた所を見られていたなんてね
正直ベール君には微塵も興味はなかったけど彼女が自覚するいい刺激になったみたいでよかったよ、こんなに近く彼女がいるなんて夢のようだねぇ
これからは彼女が知らないことを全部僕が教えていくんだと思うと尚いっそう手放せないな、まぁそんな気は微塵もないけどねぇ…
彼女が起きたらまずは二人でコーヒーでも飲んで僕の部屋でゆっくりお話でもしようか、その時にでも少しずつ教えていこうか
次に君が起きた時の顔が楽しみだよ、マルチィ