西海岸のカラリと温かい空気は、気持ちまで軽くする。ロサンゼルスへのフライト明けの休息日、昼下がりの海岸沿いを軽くジョギングしていた風信は、ふと速度を緩めた。
視線の先、歩道脇の柵に腕を置いて軽く寄りかかりながら下に広がる砂浜と海を見つめているのは──南風だ。
見慣れているはずのその姿が、少しいつもと違って見えるのはラフな格好のせいか、それとも明るい陽射しのせいか。
サングラスをかけていない横顔は、鼻筋がくっきりとして端正な輪郭を描いている。膝丈のチノパンから覗くふくらはぎは、遠目にも、過不足なく鍛えられ力強さを秘めているのがわかる。操縦席でペダルを緻密に踏むだけではもったいないほどに。
ゆるりとしたTシャツを着たしっかりした上体。いつもはつい可愛い後輩として見てしまうが、こうして見るとやはり間違いなく大人の男性なのだと、そんな当然のことを感じてしまう。
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