やっぱり非常識だっただろうか。ホテルの部屋のドアをノックしてからそう思ったが、しかし逡巡する間もなく、目の前のドアが開いた。
「どうした、南風」
「……!?」
南風は思わず固まった。突然目の前に現れたのが、風信機長の裸の上半身だったからだ。
「ん? まあとりあえず中に入れ」
促されて機長の部屋に入る。シャワーを浴びたばかりなのか、どことなく上気しているその胸から目を逸らす。
「どうかしたか?」機長の怪訝な顔に、ステイ先の機長の部屋を訪れるには遅い時間だと改めて気づく。
「あ、あの、それが……へやに、おっきな虫が出まして……!」
「虫?」
「そ、そうなんです。見たこともないような真っ黒で10センチくらいの……」
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