天井からぶら下がっている枯れた花はドライフラワーというらしい。店に一歩入った瞬間に、風信は一人で来なくてよかったとひっそり安堵した。
キャビンクルーたちが、ケーキが絶品だと話しているのを聞いてから気になっていた店。だが、こじゃれたカフェは一人だと気後れするような雰囲気なこともある。そうして頼ったのは結局――
『付き合ってやらんでもないが』
肩を竦める絵文字付きで返ってきた返信からいくらかの応酬を経て、いまこうしてテーブルに向き合っているというわけだ。
「まったく、南風でも誘えばいいのに」
まんざらでもない表情をしておきながら、呆れたような声音で言う慕情が眉を上げる。
「南風もあんまり付き合わされるのは嫌だろ」
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