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siori_MERUrin

メル燐文置き場（仮）

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MEMO

『きっと些細な非日常　16』（5月13日(木)）
ちいさいふたりについては、とりあえずなりゆきにまかせるのかもしれない感じのアレ。

##メル燐

　ちいさい天城と一緒に、もうひとりが姿を現しました。
　いえ、厳密には、HiMERUにはまだその姿は朧げにしか捉えられてはいないのです。
　けれど、HiMERUがその姿を……。
『HiMERU』じみたその色彩を、見間違うはずがありません。
「メルメルさァ、こっちは見えてねェの？」
　そう言って指し示された先には、薄ぼんやりとしたシルエットにをした、ちいさい天城と同じくらいの大きさの何かが、確かに見えました。
　思い返すと、まるでちいさな亡霊のようですね……、と、『亡霊』と書いた部分をちいさい天城が見下ろしているのです。書き物を邪魔するなんて、いけない子ですね。
　いえ、冗談なのです。HiMERUが自虐的になっているのではないかと、心配してくれたのしょうか？　ちいさい天城は優しいですね。何かお返しをしてあげたいと思うのに、HiMERUはちいさい天城がどうすれば喜んでくれるのか知らないのです。
　ふふ、指で何か書いていますね。
『さけ』？
　残念ですが、そればかりは用意できないのです。まさかとは思いますが、HiMERUが用意出来ないと踏んで無茶を言っているのではないでしょうね？　そんな風にひねくれた思いやりの表現をしていては、大きい天城のように可愛げのない人間になってしまいますよ。
　大きい天城と言えば、シナモンに呼び出されて、ちいさい天城を手渡しで返された時にはひやりとしました。まさか自分以外にはっきり見えているとは思いもよらないものですし、それが天城本人となれば尚更だったのです。
　手のひらから、所在なさげな様子で現れた天城が急いでHiMERUのところへ帰ってくる姿のいじらしいことと言ったらありませんでした。ついでに、それを見送る天城の複雑な表情も筆舌尽くし難いものがありました。自分と同じような姿形のものがいつの間にかHiMERUに懐いていたら、確かにおかしな表情にもなるでしょう。こちらとしても、ちいさなHiMERUらしき存在が、どうやら天城の二の腕付近でちょこちょこと可愛らしく動き回っている様にはどうしたものかと思いましたし……。
　あれは、本当にHiMERUなのでしょうか。
　仮にHiMERUの姿をしていたとして、このちいさい天城がそうであるように、必ずしも当人らしい振る舞いをするわけではないのではないかとも考えられるのです。
　HiMERUが天城が実際はどういった人間かは知りませんから、あるいは椎名にちいさい天城を見てもらう機会があったとしたら、本物とどれほど差があるかを鑑定してもらえたのかもしれません。
　ちいさいもの同士だからか、やけに一緒にいたがるふたりの希望を尊重して、これからは時々どちらかの部屋にセットで連れて帰ってはどうかという話もしたのですが、どうなるでしょうね。
　HiMERUとしては……。なんとなく、このちいさい天城と離れがたいと思ってしまうのです。おかしいですね。HiMERUは……。『HiMERU』のことを第一に考えるなら、天城のことなど放っておいて、あのちいさいHiMERUこそこの手で保護するべきだというのに。天城から離れたくなさそうにしているように見えたそれを連れ帰りたいとは、言い出すことが出来なかったのです。
　おや。
　今日は手の甲に寄りかかっても邪魔にしたりはしませんから、考え事をしている間、そばにいてもらえると嬉しいのです。

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