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    siori_MERUrin

    メル燐文置き場(仮)

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    siori_MERUrin

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    『いっそ踏み出す非日常 30』(6月29日(火))
    つまりそういうこと(?)

    ##メル燐

     今頃、HiMERUは旧館に着いた頃だろうか。
     旧館から移動して、寮の空中庭園に人がいないことを確認するとほっと息をついてベンチに腰掛ける。真っ昼間でかえって良かった。少なくとも、学生連中は学校に行っていて寮にはいないから、休日に比べると人目を避けるのは難しくない。
     午前中に入れていた仕事以外の所用を後回しにしてなんとかHiMERUの収録が終わるまでに部屋の片付けを終えて換気をしてきたのだが、もしもHiMERUが部屋を訪れなければ窓が開けっぱなしになっちまうっしょ──とはいえ、あいつがあの部屋に足を向ける確率は非常に高い。
     なにしろ、可愛がっていたちいさい姿の俺っちがいるのだ。昨日の今日で戻りたい気分にはなれないかも知れないが、あの部屋から出ようとしないちいさい俺っちのことを気にかけて自分の方から出向いて行く可能性は十分あり得る。
     抱き合っていた俺っちたちをどんな気分で見ていたのか、もしくは肝心なところは見ていなかったのか。いつもと変わらない様子で俺っちにくっつこうとするちいさいメルメルは、大きい方に雑に払われていた。ちいさい俺っちといえば……。
     顔を赤くしたり青くしたりしながら、HiMERUの指を避けてベッドの下に転がり込んでいったあの慌てたあの様子──HiMERUに組み敷かれて、ろくな抵抗もせずに素肌で抱き合うことを消極的に肯定してしまった俺っちの、事後の気持ちを代弁していたように見えた。
     十中八九自分の一部だと感じていたのがはっきりと確信できたわけだが、とすると、あのちいさいメルメルもやはりHiMERUの一部であると考えるのが自然だが──さて。
     自分自身のことですら認め難いというのに、あれがHiMERUであると考えるのはまた、なんとも気まずいものだ。なにせちいさいメルメルときたら、本体とは違って俺っちに随分気安いっつーか、なんつーか……。いやまあ、たまにメルメルっぽいなァと思わせるような仕草やら表情やらを見せることも無くはなかったが。
     そのちいさいメルメルといえば、今も俺っちのバンダナに捕まって、頭の上を陣取っている。
     俺っちの姿をしているほうはHiMERUが連れ出そうとしても頑なに部屋から出てこなかった──というか、ベッドの下に隠れたのをちいせェメルメルが匿って、そこでまたでかいメルメルとバチバチしてたっつーか。
    「なァんでちいさいメルメルは、でっかいメルメルと仲が悪いんですかねェ〜」
     頭上にいるメルメルを指でちょいっと突っつくと、指先がちいさい手に捕まえられた。ふに、とほっぺに指先を当てられて、いや一体なんのアピールなんだよとまとまらない考えがさらにとっ散らかりそうになる。
    「……HiMERUは」
     俺っちに好意を抱いていたから、あんなことをしたのだろうか。
     ──まさか。
     都合の良いことを考えるなと、まだ熱に浮かされているらしいアタマに釘を刺す。頭の上のちいさいメルメルは、まだ俺っちの指先を捕まえたままだった。
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