無題木々が青青と滴る巨大な樹。
錆色をした鉄の風車。
古樹と鉄鏽の合間を新しい風が吹き渡り、生と死が繰り返され、循環する景色。
それが檜佐木修兵の精神世界だ。
「ったく、今日も今日とて変わり映えしねぇな此処は」
風車の下に座り込み、風死は誰に言うでもなく呟いた。
ついと見上げれば、そこには晴れ渡ることもなければ雨が降りだしそうというわけでもない、なんとも言えない空が広がっている。
「つまんねぇ世界だ」
風死はハァと息をついて辟易した。
どこまでも変わらない景色にも、いつまでも変わらない檜佐木にも。
精神世界は鏡だ。この世界は、世界主の心情を景色として具に映しだす。この世界が変わらないということは即ち、檜佐木の心情に大きな変化がないということに等しい。
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