願い ナナミ、ナナミ……どうか、生きていてくれ。
ロックアックスの城塞を背に、ジョウイは馬上に身を預けていた。蹄の響きが、荒れた大地を打つたびに彼の意識は遠のきかけ、それでもなお、前を見据える瞳には焦燥の色が濃く滲んでいた。
脳裏には、あのときのナナミの顔が焼きついて離れない。血の気の引いた唇、震える瞼。それは肉体の痛みに歪んだ顔ではなかった。むしろ、リオウとジョウイ、二人の絆を案じての表情だった。自分を超えて、他者のために泣くその面差しが、かえってジョウイの胸を締めつけた。
ゴルドーの命令によって放たれた一矢。それは冷酷にも、ナナミの胸を貫いた。命を刈り取るには十分な深さだったが、奇跡のように、大動脈をわずかに逸れていたのかもしれない。希望は、かすかながら残されている。無闇に動かさず、然るべき医術の手に託すことができれば、彼女は死の淵から引き戻されるかもしれない。
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