武器のアレコレ「師匠、師匠はなんで弓ばっかり使うんですか?」
「ん?」
武器のお手入れ中、どうしても気になってつい好奇心丸出しで弓の弦を張っている最中の師に声をかければ手を止め不思議そうな顔になりつつこちらに視線を向けてくる。
「師匠もアイリスさんも一応武器は一通りは扱えるのに……」
家には工房もあり師も師の双子の妹であるアイリスさんもどちらも色んな武器を扱うことができた。出かける際、その日の気分で武器を変えるアイリスさんに対して師は常に強弓のみだった。
「師匠、弓以外も強いじゃないですか!」
グイグイと食い付けば師は少し困った顔を浮かべつつも大きな手を伸ばしゆっくりとした手つきで頭を撫でてくる。
…………正直この大きな手、自分は好きだったりもするのは余談だ。
「バドには、話してなかったっけか……。俺がこの弓しか使わない理由……」
「聞いて無いです師匠」
「そっか……。俺、これ以外の武器使うと、その……」
「武器、みーんな壊しちゃうのよね。ルチル、力加減下手だから」
「アイリス……」
何か罰の悪そうに言いにくそうに口籠る師の後ろの窓から揶揄う様に軽やかな声が聞こえてくる。ひょっこりと顔を覗かしたるは含み笑いを浮かべたアイリスさんだった。
「壊れ……え?」
「ルチルってね、普段がおっとりしてる分戦闘時になるとタガが外れるのか結構凶暴になるのよ。普通の武器くらいならいとも簡単に壊しちゃうのよね」
「師匠たちが作る武器ってどれもかなり頑丈ですよね……?」
「そう、それを壊しちゃうんだからどれくらいか,わかるでしょ?」
相当なモノであることを察し思わず師に視線を向ければ少し顔を赤らめて俯いていた。
「……そういうわけで俺の力に耐えれたのはコレだけなんだ……」
「師匠にも苦手があったんですねー」
「バド,俺だって苦手なものくらいいっぱいあるぞ……?」
「そうねー、イルカキューリとかアルマジロキャベツとか……」
「えー?!」
「可愛すぎてそのままじゃ食べれないらしいのよー」
「アイリスっ///!!」
ついに耳まで赤くして吠える師にアイリスさんは実に楽しげに笑っている。
「そうだルチル!どうせなら弓以外で得意なモノ,バドに見せてあげたらどう?」
「……ん……」
ゆらりと立ち上がった師の目がスゥっと細められアイリスさんをじっと射貫けば手加減してよー?と声が帰ってきた。
「バド,庭においで」
「はい、師匠!」
最後にまた自分の頭を撫でて窓から飛び出していく師。
これから見ることができるであろうすごい光景に今から胸の高まりが抑えれず片付けそのままの自分は部屋から飛び出していった。
のちにコロナから師共々正座で叱られたのはいうまでも無い。