兄であるウルスラグナは優秀だった。一度やれば全てを理解できるし、再現できた。アレスはそんな兄を引き合いに出され毎日のように貶され、兄のようになれと圧迫され続けた。全てが終わってみてから考えれば、きっとそこでおかしくなってしまっていたのだろう。
ある日、ウルスラグナが死んだ。優秀な兄の『中身』さえあれば良かった家族は兄の記憶やデータ、その本体である脳を取り出しオートマタへと埋め込んだ。そのオートマタはアレスそっくりの見た目に生前のウルスラグナの色を乗せただけの機械だった。
両親は『優秀な跡継ぎ』が欲しかった。そこに愛情は無く、ウルスラグナの顔も再現できない程本体に興味が無かった。
しかし問題は解決しなかった。オートマタとは『一つの命令に従い規則的な動きをする機械』である。ヒトのように思考したり学習したりすることがない。それは『優秀な跡継ぎ』には該当しなかった。
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