…ああ、始まった。あいつのどこで仕入れたのかわからない話
いつもと同じ。月明かりの下、波音が心地いい静かな夜に、またも心地いい静かで俺にしか聞こえない音色が、自己満足の物語を作り出す
くだらないと思いつつ、今日も耳を傾ける
『死に際に1番最後まで残る感覚は聴覚らしいね。最初に忘れるものだから、最後に人は声を求めるのかな。』
……俺の反応を楽しんでるのか、はたまた浸ってるのかは分からないが、後ろに言葉は続かない
「…知るか」
いつものように返し、あれから何も奏でないやつの口は夜に静寂を返した
スマホの電源を落とし、過去の夜明けを思い出す
そうはよく、「僕が死んだら」やら「死に際には」やら死に関連した話をしてきた
前に「死ぬ予定あんのかよ」って聞いたら「どう思う?」って帰ってきた時から、俺はビビって 知るか しか言えていない
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