The day that impossible――すっかり夜も更けた頃だ。どこにでも在るごく普通の家庭の風景。
女性がお湯を3人分のコップに注ぎ終えたのち、口を開いた。
「ねえ、今年の誕生日プレゼント何がいい?」
彼女はそう言い、我が子に訊ねるように隣に座った。
「! うーんとえーと、ぼくは……インベスティゲーター・アフター・ザ・デイの小説シリーズ最新刊がほしいな」
幼い子供が新聞紙の『Investigators after the day』の広告を指差した。
「わ!もう英語覚えちゃったの!? すごいね〜!」
「ぼくもうすぐ10才だよ? これくらい出来るよ」
そう言った子供は照れくさそうに笑い、温かいココアを飲む。
「でも映画のディスクじゃなくて小説の本がいいの?」
「うん。本は大切にしていればずっとこの先にも心にも残るからね。……お父さんとお母さんから貰ったものはずっと大事にしたいんだ」
「! ……ねえお父さん〜聞きました〜?」
「……ッ、……」
父さんと呼ばれた人物はコップを持ったままそっぽを向いてしまうが、その様子を見た母親は微笑んだ。
「ふふ、父さん嬉しいみたいね。……じゃあ、楽しみにしててね!」
「本当!? ぼくとっても嬉しい!」
「ふふ、良かった。それじゃあ明日も母さんはお仕事だし、ふみくんも学校だからそろそろ寝る支度しないとね~?」
「そうだね。朝起きれなかったらあの二人に何て言われるか全然想像つかないからなあ……。うん、ありがとう!」
そう感謝の言葉を告げながら飲み干したコップを片付ける。
「じゃあ……父さんと母さん、おやすみなさい」
おやすみの挨拶をした息子は両親のいるリビングを後にした。