無題19「…そう。」
えへへと笑うアオイの笑顔が視界の端で揺れるけど、まともに顔を見られない。
手に持たされた小さな袋。
マシュマロが詰まってるだけの軽い感触が、ずしりと胸にのしかる。
渡される直前、「わたしもゼイユに好きって言いたくて。」顔を真っ赤にしながら言うアオイに、
嬉しくて嬉しくて抱きつきかけた。
はい!と勢いよくアオイから渡された小さな袋。
見た瞬間、頭が真っ白になった。
…マシュマロ。
意味なんか調べなくても知ってる。
「ゼイユ?」
フラれた。ダメだった。
瞳を伏せて、贈られたマシュマロの袋を握り潰しそうになる。
好きという言葉に期待した。あたしの勝手な早とちりだった。
アオイが言う、“好き”の答え合わせ。
喉が詰まって、声が出ない。
「ゼイユに贈るなら何がいいかなって、一生懸命考えたんだ!」
無邪気に笑う声に、ギリギリと心が締め付けられる。
アオイは誰にでも優しい。
…わかってる。
これは、精一杯の優しい拒絶。
…わかってたはずなのに。
「ゼイユ、大好きだよ。」
好きだなんて、言わないで。
期待、させないでよ。
マシュマロを贈る意味
『あなたの気持ちには応えられない』