年齢操作if25歳剣聖と6歳殿下ifシルベスト(25)生きる目標もないままあらゆる強さを積み重ね飲む打つ買うが日常的なスレにスレた剣聖。騎士服着ている時は国を守護する完璧な剣聖として振る舞う。彼を知る人々からはクズを極めたどうしようもない男という評価が強い。第一王子の嫌がる顔が見たくて無理難題を平然とこなしながらほぼ毎日顔を出している
ifエルハーシャ(6)かわいい弟に全てを返す意思を固めた第一王子。肝と目の据わり方が尋常でなく我も強い。大切なものを手元におきたくないので各国歴代の国を滅ぼした愚王の情報を実行し自分について回る剣聖を追い払おうとする
_______________時系列メモ
出会った時:第二王子が生まれてすぐ
舌の呪い:出会って半年前後
呪ってから剣聖の動向を調査
剣聖派の存在を確認して接触。仲良くなる
それを含めて騎士団長とも交流を持つようになる。剣術、鞭の使い方、ダンス等お願いして教えてもらう。騎士団長も王妃殿下が第一王子の身を心配していたのを知っているので親心的にできる限りの協力をしてくれる。この時に嫌な予感がしてこっそり騎士団長に蝶の術式を施し現在地を把握できるようにする
騎士団長戦死未遂:10歳になって誕生日(殿下が明かさない為勝手に剣聖が日にち決めて祝った。1月の終わり頃)のお祝いをされた日の夜予知夢を見た事を日中思い出し剣聖を伴って阻止。何でもいいって言われたし誕生日プレゼントは君にしようかなーのノリで王族傷害罪をちらつかせて剣聖を自分の専属にする。失いたくない近寄らないで→完全に自分のものにしてしまえば良くない?へ思考も成長。まだお気に入り、程度の自認。この時点では騎士団長の方が好き。勿論人として
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全てを正しいところへお返しせねば
弟が産まれ、育ての母を「王妃様」と呼ぶと決めたその日からあの方との思い出の品は高価で未使用かつ綺麗なものは面会する度に弟の部屋に届け、それ以外は自らの手で処分をした
離乳食をこの口に運んでくれた小さな銀の匙
(産まれたばかりの貴方は、この匙で掬った粥を口に入れるのが難儀するほどちいさくて可愛らしい口をしていたのよ)
今はもう胸から膝上までしか隠せない小さなブランケット
(騎士団長が若い頃に狩った珍しい魔獣の毛を使ったものなの。暖かいでしょう?)
一つ一つのものに思い出がありすぎる。それだけあの方は実の子でもない自分を慈しみ過分な程の愛を注ぎ、時には厳しく、この国の未来を守る王族の義務を寝物語に説いてくれた
匙は離宮で出された初めての食事を擦り付けてその色を燻らせ、ブランケットは庭で焼いた。丈夫な毛が織り込まれていたからか、なかなか焼け落ちず軽く掌を火傷してしまう程度には難儀した。ついでに治癒魔法を試して表層的な怪我なら治せるが致命傷を受けたらひとたまりもないことを学ぶ。今の私を象るものは全てあのお方が与えてくださったものばかりで、感謝を込めながらそれらを入れた木箱を離宮の庭の隅に埋めた
「おめでとうございます、王妃様」
かわいい弟を抱く王妃殿下が自分の名を呼ぶ為に開こうとした口を強く結んだ姿に、あの寝物語は誰に聞かせていたのだろうかと浮かんだ思考を掻き消しながら心からの笑顔を送った。
ああ、ようやくこの優しいひとが心無い侮蔑から遠ざかる事ができるのか
そう、喜ばしい事なのだ
限られたほんの少しの時間だがかわいい弟に会う事だって許されている
今日は待ちに待った弟との面会の日だ。外交でお忙しい王妃様の不在の今日は、私のとっておきの絵本でも読み聞かせてあげよう
「……これも…お返ししないと、…ッッ?!」
「、!ってぇな…」
腕の中に抱いた綺麗とは言えない絵本を見下ろし、離宮から王城へ繋がる裏の回廊で足を進めては止めるのを何度繰り返しただろうか。遠くから聞こえる鐘の音に慌てて意識を戻して顔をあげると走り出した一歩目でグニャリと弾力のある何かを踏みつけてバランスを崩し膝を着きそうになる。転びはしなかったが絵本を放り出してしまい、そちらに体を向けると不機嫌そうな鋭い眼光に射抜かれ、思わず跳ね上がりそうになる体を全神経を集中して抑え込み表情を整えた。何が起きようが決して感情を表に出してはいけない
「寝ている人の足を踏んづけておいて謝罪もなしか?親の顔が見てみてぇな」
「…貴殿こそこんな所で何をしている。一般人の立ち入りが許される場所ではない」
「アンタらお偉いさんが式典だ何だと引き摺り回すもんで次の出動命令まで半刻もないのでね、人目を避けて仮眠をとっていたんですよ」
のそりと起き上がり無遠慮に見下ろしてくる男が枕にしていた上着についた落ち葉を払うよう乱暴に上着を振るうとガシャガシャと耳慣れない音が響き渡り思わず目を見張る。そこには立派な勲章が5つ。“剣聖”と呼ばれる男の胸に輝く功績、のはずだ
「あー怠い…ではごきげんよう。麗しの第一王子殿下」
式典で何度か目にした洗練とした騎士の礼。王城で見た姿とはあまりにもかけ離れた現在の容貌や言動の乖離に言葉を失っていると大きな欠伸をしながら猫背ぎみの背中が緩慢に自分の通り過ぎていく
王族の前だろうが何の躊躇もなく無礼を働くとは変わった人もいるものだと訝しげな視線を送り、彼の手元を視界に入れた瞬間一気に血の気が引く。不本意にも自分の手から離れてしまった絵本が、彼の腕に抱えられていたのだ
「待っ!……え?」
振り返った先、長い回廊に人の影はない。手入れされず枯葉の敷き詰められたその道に落ち葉の一枚すら舞っていないのだ。一歩前に踏み出せばガサリと乾いた軽い音が靴先を撫でる。白昼夢でも見たのかと何度か瞬きをするとカラリと足元で音を立てる薄い金属製の栞にこれが夢ではない事を自覚させられた
14゜30´
土のついた指で書かれたであろう時間。あの絵本に挟んでいたものだ。焦燥とは違う、腹の底が迫り上がるような今まで感じた事のない感覚を深呼吸で落ち着かせるとハンカチでそれを包んで胸元にしまった。切り替えよう、これから可愛い弟に会いにいくのだ。しっかり手を清めえてから行かなければ
サク、と落ち葉を踏みしめながらあの男が背を預けていた木の根元を一瞥するともやもやとした胸の辺りの違和感を抱いたまま足早に王城に向かった
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いけすかねえガキ
奴の第一印象だ。妾腹の第一王子。
昔は神童だ何だと持て囃されていたが今はあえて愚鈍を演じている。事情はどうあれできるのにわざとやらない姿と言うのはガキであろうとどうにも鼻につくものでそれをそつなく演じてしまえる手腕も、それを間に受ける周囲のクソ貴族共も揃いに揃って
…断じて、羨ましいなどと思った訳ではない
何もかもを持て余す才というものは手が届かないから憧れるものだ。文を一つ読めばその十手先を想定し、稽古で打ち据えられれば原因と改善点を同時に叩き出してそれを上回る技量でお返しする。自分が呼吸をするようにしているそれを、皆がなぜできないのか心底理解できなかった
舐めてかかる者が居れば力で捩じ伏せ、貶める者が居れば知識をつけて弁駁し、地位をひけらかす愚者にはそいつが決して辿り着けない不動の地位から見下ろしてやればいい。ずるずるずるずる何の目的もなく歩いた先に目についたのが件のガキだ。齢6歳で“何もかもを諦める決断をした”生まれてたった6年で目指すべき光を捉える事ができた確固たる眼差しを持つそれに酷い吐き気を覚えた
「……アレを避けるかよ 普通」
手入れもろくにされていない王城の裏の回廊で奴を見たのは本当に偶然だった。歩いては止まり、のろのろと動いて何をしているのかと思えば腕の中に後生大事そうに何かを抱えている。木に寄りかかっている状態ではよく見えないそれを見てやろうと絶妙なタイミングで回廊に投げ出した脚を持ち上げ転ばせようとした瞬間、避けた上で踏みつけてきやがった
自分の手元に落ちてきたのは何の変哲もない絵本。旅に出た王子が仲間と共に悪を討伐し、国民に祝福されるという内容だ。何が面白いんだか、随分と読み込まれていて王子が家族に「おかえりなさい」と迎えられるページには手入れのされた薄い銀製の栞が挟まっている。これがあいつの瑕疵かと思うと思わず口角が上がった。予想以上の収穫だ
大人気のなさなど、とうの昔に捨ててきた
さて、ラブレターを受け取った王子はどう動くのか。あの澄ました表情がどんな歪み方をするのか、仕事後の安酒が今日は非常に美味しく感じた