「サクラ姫、貴女を一目見た時から好きでした。ぜひとも、私と結婚してはくれないでしょうか」
隣国で開催された宴に招待された席で少し風に当たろうと席を外したときに声をかけられた。
呼ばれたとはそういうことだとわかっていた。
そして、私の答えも決まっていた。
「申し訳ございません。私には心に決めた方がいますので、貴方のお気持ちには答えられません」
「……そうですか。ですが、そのお相手は貴方に相応しい方なのですか?心に決めておられるのに、貴方をこうして1人にしている。そのような男より私といれば貴方を寂しくさせることなど、」
「たとえ、そばにいれなくても、どれほど遠く離れていても私は彼を大切に思う事心は変わりません。お話は以上でしたら、失礼致します」
「…何故だ!あんな奴、どこの誰とも知れない、身分違いも良いところだ!お高く止まっていられるのも今のうちだ!僕がお願いすればお前たちの国なんて!」
振りかぶられる拳を眺める。
彼に言葉で通じなかった自分の無力さを感じる。
と、視界を遮る人影が。
「大切に思う人に拳を振るうのか」
ああ、どうして彼はこうもタイミングが良いのだろうか。
「貴様!何故ここに!」
「親切に教えてくれた人たちがいたからな。姫への用が済んだのならこれで失礼させて頂く」
「ただいま、サクラ」
「おかえり、小狼」