無題「おう今日も朝帰りかぁ?好かれすぎてンのもつれぇなぁ」
「冗談言わないでください春菊師匠……」
その日も落語家らしくないタートルネックをしっかりと首まで着込んで控え室にフラフラと入ってきた裕史。
昼前からの打ち合わせで、帰って着替える時間もなく昨日と同じ服で先にいた師匠の春菊に茶化される。
ちなみにタートルネックは「流石にそんな姿でお客の前に出るわけにはいかねぇなぁ」と言われ、上には「ま、多様性ってことで」と師匠の鶴の一声で許されている。ありがたいことだ。
「頭働いてるか?弁当あるぞ、食うか?」
「ええはい……打ち合わせはしっかりとやります。
弁当は……後でいただきます」
「そうだ今日の打ち合わせ、県外の文芸ホールの方も来るそうだ」
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