クロディ5話目だと思う 小刻みに震える手を見下ろしていた。世界の全ての音は遠く、自身の発する荒い息遣いだけが鼓膜を震わせていた。
クロードはディアスに勝った。
宇宙の命運を賭けた最後の戦いに挑む前に、クロードはディアスに手合わせを頼んだ。誰一人として欠けず戦い抜く為に、皆を守り抜ける実力が今の自分に備わっているのか、それを確かめたかった。
片膝を突いたディアスは薄く微笑みながら、強くなったと言ってクロードを見上げた。鮮やかで穏やかな赤い眼差しだった。
どれくらいその場で立ち尽くしていたのかは分からない。徐々にクロードの耳は周囲の喧騒を拾い始め、そこが闘技場の片隅であることを思い出す。クロードの脇を駆けて行った子供が、父親を呼ぶ声がする。頭上の吹き抜けから覗く空は雲一つない。何処からか飛ばされて来たらしい赤い風船がいやに目を引いた。
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