『古い記録』 全ての命は祝福され、望まれて生まれてきたはずだ。それがひどいノイズと埃、硝煙とオイルの匂いで満たされた世界だとして、生まれてきた理由はまったく、外側にある。
意識を得たとき、彼は小高い塔の上にいた。まわりは金属によって構成されていて、彼自身もそうだった。鋼鉄のからだの内側で激しく青く輝く心がある。彼が生まれるときに望まれた言葉が、身の内で叫ぶのだ。
その言葉はおそらく二通りの人物から預けられていて、果たしてどちらをとるかほんの少し悩んで、どちらも彼は選んだ。
選ぶことこそが彼の最初にすべきことで、そこで初めて世界に色が生まれた。
最初に見たのは、青い光。彼を見上げるその瞳。次いでこちらを貫く閃光。やるべきことはすぐに分かった。
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