秋の小噺兄者と秋の朝
起きたらもう布団を空にしていた弟が
庭の向こうからやって来る
白い息を切らせて頬を赤くして運動靴が土を蹴る
廊下で眺める僕に気付いて「兄者!」と破顔した
朝餉の前に元気だなあと思ったら
走る勢いのまま両腕を大きく広げて抱きつかれた
「おはよう弟。どうしたんだい?」
「おはよう兄者。急に寒くなったと言っていただろう。兄者に温まって貰おうと思って」
体温をあげて来たのだ。どうだ、温かいか?
…って
ああもうねえ、この子は
「すごくあったかいよ」
心はもっとぽかぽかした
弟丸と秋の夜
おやすみ兄者、おやすみ弟と言いあって
行灯を落とそうとした俺に兄者が目を丸くする
上から下まで頭ごと動かして俺を見る
「どうした、兄者」
「おまえ、それで寝るのかい?」
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