綺麗な男だ。
抑えた灯りに浮かぶ影を吐く煙越しにじっくり眺める。
静かな衣擦れの音。
微かな吐息。
紺色の衣を引っかけただけの男は見事な体躯を惜しみなく晒しつつ、視線は気だるげでどこか遠い。
いつも厳しいくらい生真面目で、鋭い眼光を以て周囲を威圧する様からはかけ離れたこの姿を、彼の朋達とやらはどのくらい知っているのだろうか。
無表情に力の抜けた横顔は危うい美しさまで醸し出している。
全身くまなく古傷だらけ。体格に恵まれ、腹立たしくもこちらより頭一つ背の高い裏路地の人間であるはずなのに……今見ている姿はひどく薄い氷板のような、触れようと手を伸ばした途端に溶け消えてしまうような、そんな幻想的な儚さがあった。
無造作に垂らしたままの長い黒髪がそうさせているのか、二本目の煙草が半分を過ぎてもなお分析できない。
1327