「ムルソーが少年のころに護衛をしたグレゴールと、自分を護る彼女の姿に恋をしたムルソー少年があの人に見合うように超頑張ってセンク三課まで強くなった」
という高純度の幻覚で成り立っています。
年下の恋人が膝枕で眠っている。
いつもの配信よりはくつろいだ格好で、静かな寝息を立てている。
短くてもさらさらの黒髪を左手で撫でながら優しい夢を祈っていた。
「…………ん……」
眠ったまま、少し身じろぎをして腹に顔を埋めて来る。すりすりと額を擦り付けられて、ちょっとくすぐったいけど、苦しくはないので起こさず好きにさせた。
ここ最近強敵との決闘が続いたらしい。配信中決して顔には出さないものの疲れが溜まり、決闘以外でも訓練や指導を欠かさない生真面目な彼にも限界が来ていたようだ。泊りに来て早々酷く疲れた顔をして思わず驚いてしまった。
こちらのことより自分の体を休めろ。
そう言って半強制的に膝で寝かしつけてからさほど時間は経っていない。
流石に困惑していた彼もあっという間に寝付けてしまうほど相当疲れていたのだ。
微かで静かな呼吸を感じる。
こうして穏やか寝顔を見ると、普段の立派なセンク三課様よりも年下の可愛い男の子だと再確認する。
少し無理を圧しても頑張る真面目くん。
人に甘えるのが少しだけ下手で、放っておくとすぐに一人で解決しようとしてしまう。無理をするなと何度か指摘したことがあるが、こればっかりは彼の性分なのだろう。
そんな彼が自分にだけ見せる油断と隙の、なんと可愛らしいことか。
すっかり大きくなった——やや大きくなりすぎな気もする体躯をソファに収める恋人に目を細める。
頑張るのも結構だが、たまには肩の力を抜いて、優しい夢を見てほしい。
この肩で良ければいくらでも貸すから。
まあ……今は肩ではなく膝なのだが。
ゆったりとした時間が流れていく。
ここだけの時間が、流れていく。