カーテンの向こうに淡く白っぽい光が透けている。
朝の鍛錬が休みの日。
夜遅くまで起きていた彼はまだ夢の中。薄く開いた唇から規則正しい呼吸を繰り返していた。
たまたま先に目が覚めて、起き上がるでもなく何をするでもなく、綺麗な顔をぼんやりと眺める。
いつもの精悍な顔つきが幼くなるこの無防備な寝顔が密かに好きだった。研ぎ済まされた一振りの剣のような彼が、心から安心しきっているという事実に嬉しくなるのだ。眠っている間だけでも穏やかな時を過ごしてほしい。
ふと、ふと。
おもむろに沸いた好奇心から彼の下唇に人差し指を置いてみる。
他の肌よりも柔らかい皮膚の感触。
多少では起きないのを良いことに、ふにふに、と弱く撫でると開いていた唇が閉じて指先を食んだ。
「っ」
まさか起こしてしまったか?
一瞬焦るが彼は未だ夢の時間。起きた様子は無い。
——か、可愛い。
思わず溢れかけた声を咄嗟に堪えた。
むにむにと食まれる指先がくすぐったい。
なんだこれ、可愛すぎる。
自分よりずっと体が大きくて、逞しくて立派なのに、無意識でもこんな愛らしいことをされたらどんどん好きになってしまう。
こんなの、心臓がいくらあってももたない。
「ぅぅ」
どうにかこうにか、可愛い恋人を起こさないように全力で悶え苦しむ。
指を引くタイミングを完全に見失ったまま、お構いなしに朝の光は強まっていた。