ひとの膝を枕に寝転がる女が笑っている。
酒に逆上せた目元は色づき、髪紐が緩むのも気にしていない。
へらへら、けらけらと、何が面白いのか愉快に笑っている。
「とーもくさん」
鉄の手が下から頬に伸びて来た。
誘いに乗り、つるりと滑らかなそれへ頬を寄せる。ひんやりと冷たい面が酒で火照る肌に心地いい。
見降ろせば、こちらの仕草の満足気な黄昏の瞳と視線が合う。
「どうした」
「んー? んゃ?」
何もない、返しつつもう片方の手も頬に添え、やんわりと揉む。
古傷だらけで肉も薄く面白味があるのか分からないが、彼女が楽しいなら楽しいのだろうと好きにさせた。
「とーもくさん」
特に意図も無くただ呼びかけ、ひとの頬で遊ぶ女。
——酒で火照った唇が旨そうだ。
ふと沸いた食欲に吸い寄せられたがすぐに止めた。そんな衝動でこの甘いご機嫌を崩すのは勿体ない気がしたのだ。
「とーもくさん」
「……」
「こーこ」
ふわふわと彼女が唇を指し示す。お前が欲しいのはここだろ、と。
……ならば遠慮はいるまい。
ひとの葛藤を足蹴にしてくれた酔っ払いに覆いかぶさり唇を求める。
あ、と僅かに聞こえた声ごと柔らかく温かいそれを食み、開き招かれるまま舌をねじ込んだ。