肺に煙を溜め、重く重く、深く吐き出す。
俺にとって口の寂しさを紛らわすものも、胸の寒さは紛らわしてくれないらしい。
今日は特に胸が寂しい。
今日というか、ここ最近。
画面の向こうでは白い騎士が華麗に勝利を決めている。映像で捉えられない高速の剣技で相手を圧倒し、すでに淡々と戦いの解説やコメントの読み上げに入っていた。手慣れた仕草は関心さえ覚える。
それをぼんやり眺めながらもう一度、煙を食み、宵闇に送り出す。
嗚呼、かっこいいなぁ。まったく、飽きることなく惚れ惚れしてしまう。
嗚呼、最後に彼に会ったのはいつだったか……先月の頭だったかな。
決闘の依頼が立て続けに入り、協会のフィクサーとしてはありがたいことだろう。そのおかげで俺は会うこともままならないが、かといって彼の邪魔をする気はさらさら無い。自分を知るからこそ、重いと思われるのも嫌だ。
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