くあ。
護衛任務中だというのに気の抜けたあくびが出てしまう。
そろそろ夜明け。
締め切ったカーテンの隅からほんのりと青い光が漏れ、早起きな鳥の鳴き声も遠くから聞こえている。
密着護衛は時として依頼者の寝室で夜間待機する場合があり、今回がそれだった。
すやすやと安心しきって眠るお客さんが羨ましくないと言えば嘘になる。逆に言えば、深く眠られるくらい信頼されていると思えば良いことなのだろう。
護衛はこの夜が明けるまで。つまりお客さんが起きて任務完了の手続きを終えたら今回は上がり。
ツヴァイに依頼するほど警戒するわりには大きな揉め事も無く、比較的楽だったのは助かる。
「はぁ……ぁー……」
もう一度大あくび。お客さんが起きる気配は無い。
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