「ま、待て、な?」
「待たない」
ガタガタともつれ合うように寝室に追い込まれ、最後は軽々抱えられてベッドへ降ろされる。
突き飛ばされないだけ紳士的だが、それよりも。
「お前、んっ、まだ昼なのに」
レースカーテンに透ける陽気は白く明るく、こんなことをするには早すぎる。
お互いの仕事がたまたま午前中で終わり、午後から休暇に入ったからと言っていささか性急すぎやしないか。
シャワーは事務所で借りたし、まぁ、その……夜に向けての支度じゃあないが、後ろの準備は済ませてある。
とは、いえ、だ。
「あ、こら、見えるとこに…!」
耳の後ろをやや強く吸われて叱る。
絶対見える位置だ。どうにかして隠さないと、女性陣の良いおもちゃにされてしまう。
「んっ」
「……どうしてそこまで拒むのか、教えて欲しい」
あっという間にベルトを抜かれ、馬鹿正直な息子をパンツの上からゆるゆるとしごかれる。
ああもう、そんな声出すなよ。
俺がその声に弱いの、知ってるだろ。
「だって、明るい……っ」
メガネを掛けていなくてもこんなに明るければ部屋全体が良く見える。
つまり、俺の痴態も彼には丸見えで、その事実を問答無用で突きつけられるのだ。
明るくて恥ずかしい。
全くもって情けない理由だろう。
「……」
「んぇ……?」
不意に与える刺激を止め、ベッドから降りるムルソー。
急なことについて行けず上った息を整えつつ彼の姿を視線で追う。
閉められる寝室のドア、それから窓のカーテンも。
すれば先ほどよりは部屋が薄暗くなる。
夜よりは明るいが、まさか。
「これで夜だ」
……マジか。
屁理屈にもほどがあるだろ。
ベッドに戻って来た濃い緑に思わず逃げ腰になる。
当然逃がしてもらえるはずが無く、色を深めた緑色に溺れるしかなかった。