後頭部のリボンを揺らす。
今日の俺は少し機嫌が良い。
「お疲れさん。さぁ、目的地に到着だ」
一日掛かりの護衛も無事に完遂し、慣れた食事の誘いも軽やかに断って事後処理に移る。
事後処理と言っても事前に準備した書類をまとめて提出すれば今日はおしまい。
疲れていてもこんなに気分が良いのは、今も後頭部で揺れているだろう髪飾りのおかげだ。
青と白を基調として上品な金の刺繍が施された髪飾り。おっさんには少々きついのではと最初こそ思ったものの、着けてみればまあまあ悪くない。ツヴァイの制服が青いから特別浮くことも無い。
これをくれた男が満足気にするわけだ。
「……もしもし、ムルソーさん? ああ俺だ。今日はもう終わったんだけど、時間あるか? これから飯でも……ああ、うん……そう……そう……ん、じゃあいつもの待ち合わせで」
ツーコールで出てくれた彼と夕食の約束を取り付けて拳を握る。
今日はこちら側で出張決闘だと聞いていたからあわよくば……と画策していたのが功を奏したらしい。
最近会えなかったぶん、恋しさも多分に募っている。
良い歳なんだからいい加減どっしりと構えて、むしろ彼を受け止める落ち着きを備えなければと思うが、己の本音は誤魔化せない。
今月のフィクサー雑誌の特集はもう暗記してしまった。
早く会いたい。
このリボンと同じ色をした、最愛の騎士様に。