西部センク協会には朝練がある。
流石は実力主義の協会。日々決闘のために研鑽を積み、更なる高みへ向かう努力を惜しまない。
正々堂々と衆人環視の中で実力を見せつけ、栄光と羨望を掴み取る。
今正に眉間に皺を寄せ、夢に帰りたがっている彼もまたその一人だ。聞くと、センクの活動の一環でしている動画配信が、ここ最近は再生数の伸びが良いらしい。
今日はそんな彼、ムルソーの朝練が無い日。
普段は俺より早く起きて朝練に励むのだが、今朝ばかりはしっかりと寝坊を満喫していた。
だが、とはいえもう昼に足が掛かろうかという頃合い。
そろそろ起こしてやろうかと、体を起こしてシーツにくるまったままの彼に声を掛ける。
「おーい、ムルソーくーん」
「……」
起きてはいるのだろう。が、眠気に勝てないらしい。
寝ぐずる婚約者が可愛くて可愛くて、小さく笑いつつベッドに乗り、形の良い額にキスを贈った。
「おはようさん。良く寝られたか?」
閉じられていた瞼が薄く開き、数度瞬きを繰り返す。
今日を出迎えたご褒美に彼の髪を撫でて乱れを取ってやる。
そして、やっと俺を見たおぼろげな深緑へもう一度朝を告げた。
「おはよう」
朝ごはんも温め直してやるから、早く夢からこちらへおいで。