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    syunenmei5

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    syunenmei5

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    ⑤②ムルグレ

    肺に煙を溜め、重く重く、深く吐き出す。
    俺にとって口の寂しさを紛らわすものも、胸の寒さは紛らわしてくれないらしい。

    今日は特に胸が寂しい。
    今日というか、ここ最近。

    画面の向こうでは白い騎士が華麗に勝利を決めている。映像で捉えられない高速の剣技で相手を圧倒し、すでに淡々と戦いの解説やコメントの読み上げに入っていた。手慣れた仕草は関心さえ覚える。
    それをぼんやり眺めながらもう一度、煙を食み、宵闇に送り出す。

    嗚呼、かっこいいなぁ。まったく、飽きることなく惚れ惚れしてしまう。
    嗚呼、最後に彼に会ったのはいつだったか……先月の頭だったかな。

    決闘の依頼が立て続けに入り、協会のフィクサーとしてはありがたいことだろう。そのおかげで俺は会うこともままならないが、かといって彼の邪魔をする気はさらさら無い。自分を知るからこそ、重いと思われるのも嫌だ。
    婚約者という立場に縋りついて煙にため息を混ぜるしかできない。
    連絡はくれている。それで充分のはずなんだ。充分だと思わなければいけないはずなんだ。

    嗚呼……いつから俺はこんなに我慢が出来なくなってしまったのだろう。
    本当に、嫌になる。
    いつか、若く強く麗しい彼に俺よりもっとずっと素晴らしい女性が現れて、婚約破棄を突き付けられてしまうんじゃないかと怯える自分も。
    会いたいなら会いに行けばいいと分かっていて行動を起こせない自分にも、嫌気がさしてかなわない。

    最後の煙が夜に逃げていく。現実から逃げる俺にそっくりだ。
    夜間決闘の配信もそろそろ終わろうかという頃。
    俺も明日が早いし、今日はさっさと酒でも飲んで寝てしまおう。
    要は寝逃げ。ああそうだ、なんとでも言え。

    配信を閉じる前にコメント欄へ文字を打ち込む。
    彼は知らない俺のアカウントで、ただ一言だけ。

    「かっこよかった」

    他のファンと同じような、コメント群にすぐ紛れてしまう一言を投稿する。いちファンの素直な感想として。
    そして配信を切りベランダから引き揚げて冷蔵庫の方へ。今夜はちょっと良い酒と貰い物のツマミを開けよう。
    さっさと寝て、この胸の寂しさを忘れてしまおうじゃないか。

    俺が動画を切った直後。
    まだ配信中だった婚約者がほのかに笑ったのを、知る由も無かった。
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