夜更けから降り続けている雨が一度強く窓を叩き、俺の夢を蹴散らされる。
「……、…………」
焦点の合わない世界で瞬きを数度。
やっと見え始めた景色は見慣れた壁、と、家具。あと枕とか、シーツとか。
全部まとめて薄暗く、カーテンの向こうから透ける光も弱かった。
「……くぁ」
今、何時だろう。
起きたい時間よりずっと前だろうが、雨のおかげで定かではない。
ベッドボードにあるはずの目覚まし時計を手に取ろうと寝返りを打つ。
「ん……」
が、上手くできなかった。
背後から届くかすかなうめき声。
それで意識する腰に乗る太い腕と、肌寒い空気から背中を包んでくれる温度。
うなじに感じる微かな寝息から、可愛い婚約者に甘えられていることを把握する。うめきはこちらの身動きに反応したのだろう。起きる様子は無く、静かに眠り続けている。
長い足までしっかり絡めて、さながらこちらは抱き枕。
くっつく素肌から与えられる温かい体温が今朝は心地いい。
「……………………」
ろくに身動きもせず、雨の音と規則正しいささやかな息を感じつつ。
心地良い温度に包まれてしまえば夢はすぐに戻って来た。
この時間が密かに好きだ。
俺と、彼と、それだけの黎明。
もう少しだけ、もう少しだけ。
夢の中、へ。