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    syunenmei5

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    syunenmei5

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    ⑤②ムグ
    この香りが

    あの煙草の匂いがしない。
    小柄な温もりが、いない。


    体に燻る寒さが意識を浮上させる。
    気だるい体を起こし、瞼をこすりつつ点けっぱなしだったモニターの眩しさを睨んだ。
    今日は午前中から決闘の連続だった。勿論、全員に勝利したのだが、思いのほか疲労となっていたのだろう。途中で止まっている編集データは保存すらされていない。

    僅かな逡巡。
    そして動きの鈍い頭で決め、編集を保存してモニターを切る。
    今の状態で作業をしたところで成果は知れている。ならば、この疲労に従い早々に就寝した方が良い。
    時刻は……もう少しで日付が変わるか。
    僅かな空腹を意識する前にベッドに潜り、重たい瞼を閉じた。

    ……そういえば。

    ふと、先ほどうたた寝を遮った胸の涼しさを思い出す。確かに感じたあの冷えた風を。
    風が運ぶのはマイルドな紫煙。

    口が寂しいと彼が良く吸う銘柄。
    こちらより頭一つ低く、安心する温度の無いベッドはこんなに広かっただろうか。

    最後に会ったのはいつ。
    こんな夜、彼は何をしているだろう。

    らしくない思考が這い回り眠気を外に押しやってしまう。
    眠気を期待しつつしばらく天井を眺めても目は冴え切ったまま。仕方なく、ため息ひとつに体を起こし引き出しを探る。
    彼のためにストックしてある煙草を一本。それとマッチ箱を掴んでベランダへ。

    窓の外に広がる濃紺の空は世界の蓋。
    眼下の店店は依然明るく、耳を澄ますと風に乗って賑やかな喧騒が聴こえて来る。

    咥えた煙草に火を点ける。
    普段から煙草はあまり吸わないし、吸うのは銘柄ではないが。
    どうしても、この味が……香りが欲しかった。

    「……」

    吐くのは煙かため息か。
    嗚呼、独りでよかったと思う。
    こんな姿、彼には見せられない。
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