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    syunenmei5

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    ⑤②ムルグレ
    Let’s Kiss !!

    ……キス、を、してみた。
    俺の方から、ムルソーに。

    いつもいつも、キスのきっかけをくれるのは彼だ。
    なんとなくそういう雰囲気になって、もしくは、そういう気分になって声を掛けて。
    俺よりも積極的な彼からキスを誘われる。
    俺はそれに応えるように瞼を閉じて待つのだ。
    全部が全部そうじゃないが、思い返せばほとんど受け身。
    俺だって年上としてのプライドがある。そりゃあ、ちゃんとリードしたい。
    任せっぱなし、やられっぱなしじゃいられない。
    ふつふつと沸きあがる気合いに押されるまま唇を合わせる。
    立ったままだと届かないから、ソファに座って目線が近くなったタイミングを見計らって。

    「……」
    「…………えー、っとぉ?」

    キスの結果は果たして硬直。
    俺をじっと見つめたまま微動だにしない。
    予想外の反応にじわじわと不安が漂ってくる。

    何かしくじっただろうか。
    俺が一方的にしたかっただけで、今は気分じゃ無かったとか。
    もしくは、俺からするのは迷惑だった……とか。

    「む、ムルソー……?」

    固まったままのムルソーを呼ぶと広く逞しい肩が揺れ、止まった時間が動き出すように瞬きを繰り返す。

    「その、わ、悪かったよ、急に変なことして」
    「謝らなくて良い。変なことでも無い」

    いつもの調子で返されてなんだか拍子抜けしてしまう。
    多少俺から仕掛けても平気なら、今度からもっと積極的になってもいいのかもしれない。

    と、などと思っていると。
    次の視界は背景に天井。
    ……天井?

    「へ」

    次いで覆いかぶさってくるムルソー。ハンサムは顔が陰ってもハンサムなんだな。
    違う、違う。

    「ムルソー、さん?」

    自分がソファに押し倒されたことを認識しつつハンサムを伺う。状況的に、まさかここでする気なのかと。
    そして後悔した。
    その深緑の瞳を見るべきではなかった。
    静かな色に灯る情の烈火は簡単に延焼し、背骨を伝って腰を疼かせる。
    勝手に漏れた吐息の熱さが恥ずかしい。

    「あまり不用意に煽らないで頂きたい。貴方は自身がどれだけ魅力的なのか、もっと自覚するべきだ」
    「そんなこと、んっ」

    降りて来るキスに反論は溶かされ、甘い激情に抱きしめられた。
    酸素が遠い。
    胸が痺れる。

    ぼやけていく理性の輪郭。
    反論も建前も、もう必要ない。
    今は心地良い酩酊に身を任せ、彼を存分に求めよう。
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