呼吸が熱い。
肺から全身に燃え広がる熱に意識まで焼かれ溶け落ちそうになる。
崩れそうな膝を辛うじて立たせてはいるものの、ひとを無遠慮に壁へ押し付ける大きな体が無ければあっさり倒れていたことだろう。
そのくらい必死に全力で、彼の激情を受け止めている。
「ん、ンッ、ふぅ……っ」
口を蹂躙する厚い舌。
逃げる前に巻き取り、啜り、唇で甘噛みする。
それだけでぞくぞくとうなじが粟立ち腰へ快楽の電流が渡った。
以前までキスすら興味無かったこいつにキスだけでも気持ちよくなれると教えたのは自分だ。
年上風を吹かして、生真面目に強さを求めていた青々しいガキに色々と仕込んだ。俺のことが好きだと分かってからはからかい半分、弄ぶように彼の未知を教えてやった。理由はただただ面白そうだったから。それだけだ。
ちょっとした暇つぶし。気まぐれ。ちょっかいだったはずなのに、このザマは何だ。こちらは呼吸すらままならず、熱い温度で溶けそうになってしまっている。
おかしい。違う。こんなはずでは
己が仕込んだキスの快楽で尻穴が勝手にひくつくのを感じながら男のジャケットを握り絞める。
やがて視界までぼやけてのぼせて、もうそろそろ限界だと思ったころにやっと唇が離れた。
久しぶりに感じる空気も熱いまま。肺なんか焦げてるんじゃないか?
「っは、か、げん、しろ……!」
肩で息をしながら睨み上げる。
そして見てしまった。相変わらず壁で俺を挟む男の、欲に燃える瞳を。
「ぁ」
「グレゴール」
瞳から炎が燃え移る。
腰がぞくぞくと震え、心臓が跳ね上る。
「……私の部屋で、いいですね?」
耳たぶを甘く噛まれながら有無を言わせないお強請りを囁かれる。
嗚呼、もう。くそ。くそ。
こんなはずじゃなかったのに。
俺がリードして良いように弄んで、それで終わりだったはずなのに。
「う、ん」
これじゃあ逆だ。
こんなジャリガキに俺の方が溺れてるなんて、そんなこと。
そんなこと、絶対認めないからな!