同胞、からから、胎の底から 始まりは、不調とも呼べないような小さな違和感からだった。
風邪の引き始め特有の悪寒や、気だるさなんて症状もなく、常に苛んでくる頭痛が起こるといった、日常を過ごすのも厳しい不快さなども有りはしなかった。
ただ、随分と喉が乾いてしまう。ああ、水が欲しい、というぼんやりとした些細な感覚が頻発する。そんな、ケルシーには言うまでもない、ふとした瞬間の息抜きに「空気が乾燥する季節になったんだな」と秘書を勤めるオペレーターに話題を振って、そのまま談笑に入ることが出来るような範囲の出来事であったのだ、と。ドクターは自身の身に起きていた違和感の初期症状を、閉じた瞼の裏で思い返そうとしていた。
そして、黙って瞼を閉じている間に、いつしか眠ってしまっていたのか。
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