現パロ文仙+綾/とっとと別れちゃえばいいのに別に特別な感情があったわけじゃない、と思う。
とはいえ相手はかつて沢山お世話になった立花先輩である。遠い昔の記憶の中、幼い頃から可愛がってくれていた二つ年上の先輩の顔を思い浮かべ、喜八郎はううーんと猫のようにひとつ伸びをした。
生まれる前の記憶があると気がついたのはいつの頃だっただろう。もしかしたらツンと勝ち気な黒目と目があった時、そこではじめて甦ったのかもしれない。街中で彼と偶然再会できたことは、人生の中でも一二を争うほどのラッキーだったと言えよう。
とまあ悠長に回想をしている場合でもないのだが。
「今日のお夕飯なんだろう」
ピンポーン。
喜八郎はぐうと鳴る自身の腹をツンとつついてから、目の前にあるインターホンを押した。
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