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    三咲(m593)

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    三咲(m593)

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    エー様が沼地を吹っ飛ばすまでの話。死にネタ有り。バッドエンドかも

     流れ星に願えば望みが叶う。地上の子らから聞いたという、そんな話をしていたのはカマエルだったか。
     流れた星の行き先を、楽し気に追っていた声は今、腕の中でか細い嗚咽を上げている。すでに剣を置いていて良かった、と思う。震える肩を抱き、その頭をなでるには、両腕がなければ叶わない。

     地上の子らは、どんな願いごとをしたのだろう。誰が願えば、この結末を変えられたのだろうか。この自分か? 天使たちか? 力を与えたあの娘か? ……あるいは魔皇か?
     夜とともに地上に降りた、天使たちは言っていた。地上から見る流れ星は、こんなにも遠いものなのかと。
     だが天上から見る星もまた、手の届かない距離なのは変わらない。誰が願ったところで、正しく叶うはずがなかったのだと、理解をしたから剣を掲げた。願いはそうして、すべてに等しく降り注いだのだ。

     願いとは本来、美しいもののはずである。でなければ、最期を迎えたこの大地が、こんなにもまばゆいわけがない。対価や代償ですらない、当然の結末。これこそが世界の望みなのだと、エーリュシオンは今再び理解した。

     辺りがにわかに熱を持つ。光をともなって訪れたはずの衝撃は、拾いきれずに無音となって、耳を素通りして行った。最後に感じたのは、幾重にも重なる、分厚い膜のような熱。すがりつくカマエルの手に、力がこもったことだけだ。

     一呼吸の間が、ずいぶん長いものに思えた。光の中に散った意識は、これまで見ていたはずのものを、おぼろげに辿って消えてゆく。
     何度も繰り返した問いが、誰かの声を模して響いた。

     ――私が間違っているのなら、私を生んだこの世界、そのものが間違っていたのだ。




     一面に穢れのにおいがする。思わずしかめていた顔を上げ、エーリュシオンは剣を握り直した。このような場所にまだ、人が住んでいるというのだから、なにかの間違いではないかと思ったほどだ。死のにおいは地上に近づくほどに濃さを増し、命をかき消さんとするように、今も大地を侵食している。
     聞いていたよりもずっと、汚染は広がっているようだった。空から見た限りでは、西の中心は沼に沈みかけているという。まだ清浄が保たれている東には、海に向かって隣り合うように街が二つ。そこから伸びる街道沿いには、町や村が点在している。人が住める場所があるとすれば、東はまだ安全な方だと言えるだろうか。

     汚染の原因にはすでに見当がついている。始まりはただの怪談話、次は真に迫ったうわさ。重なるたびに真実味を帯びていく現象を、人々が事実として認識した時、毒はすでに町のそばまで迫っていた。
     使わせた天使が報告を持ち帰ったことで、天界もまた異変に気付く。死を迎えた肉体が、再び命を持ったように動き出す。そんな超常めいた理があるとすれば、心当たりはすぐに浮かんだ。
     これは魔皇の侵略だ。受け取ったいくつかの内容は、早い内から符号をそろえ、判断には確証を得るまでもなかった。
     元よりこの地は、天界や冥界とも近しい場所にある。だからこそ監視を怠らなかったのが、功を奏したと言えるだろうか。
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