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    三咲(m593)

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    三咲(m593)

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    アレス&ラフロイグ。どこかに組み込むかも。

    ##オレカバトル

    駆け上がってくる足音に、面倒なやつだ、と魔皇は小さく笑う。ただ見送るつもりだったが、わざわざ挨拶をしに来たらしい。引き止めるつもりも、送り出すつもりもない。すでにそう告げているというのに。
    「やっと見つけたあ」
     探したぞ、と飛び込んできた少年は、いつもとは少し違う鎧姿をしている。同じ赤色でも、剣士らしい出で立ちだ。彼と自分の明確な違いが、形を成したようで面白い、とも思う。
    「お前にも言っておきたくてさ。……この姿になれたのも、お前のおかげだ」
    「感謝されるような覚えは、ないのだが?」
     肩をすくめて見せれば、少年は小さく噴き出して、「お前、結構顔に出るよな」と笑った。む? と睨むように首を向ければ、逃げるように顔をそらす。こんなやり取りももう、すっかり馴染んでしまっている。
    「お前と戦ったこと、無意味にしたくないんだ」
     だから王国に戻る。彼はそう言って、特に頭の固い従者も、見事に説き伏せていた。渋々送り出したであろう顔は、見なくとも想像がつく。
     主が不在の間は、自分が代わりになだめてやろう。そんなことを思いながら、手元のグラスを持ち上げ、軽く振って見せる。半分になった記憶の中身は、今もそのままだった。
    「貴様が留守の間に、我が椅子を奪っているかもしれんぞ?」
    「その時はオレが奪い返すよ」
     あっさりと言い返した彼に、含み笑いがこぼれてしまう。
     相反するものだからこそ、自分の姿を映し出せた。奪い合いこそが自分をこの姿に変えたなら、かつて分かたれた願いはもう、元の形に戻っている。彼はそう、自分と自分を取り巻く世界に、確かに答えを出していた。
    「それじゃ、行ってくる」
     すぐに帰る。そう言わんばかりに、振り返って手を上げた少年に、グラスを掲げて答える。心地良い騒々しさも、しばらくお預けになりそうだ、と思った。
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