かわいいいたずら 曹紫 「曹操殿を…労りたい？」

そんな一言から始まった。

紫鸞は
日頃、政務に追われてまともに寝れていない曹操を何とかして労わってあげたいと強く思い、郭嘉達に相談した。


「確かに、ここ最近私達も激務でまともに寝れていませんからね…曹操殿はもっとでしょう。」
そう話す、荀彧達の目の下にはうっすらと隈が浮き上がっていた。

「曹操殿を労ると言いましても、軍議等でしか俺たちは話すことがないので、普段どのようなものが好みなのかは……。」

「公達殿……飲み過ぎですよ…。」

荀彧は荀攸の介抱をする。

この光景も何度見た事か…。


「曹操殿を労れるのは、貴方しかいないよ。無名殿。いいやり方を知っている。」

郭嘉はそう言うと、紫鸞の隣に座った。

「まずこうして、相手の手に自分の手を乗せる。そして、相手の目をじっと見つめるんだ。」

眉目秀麗な彼を前に紫鸞はほんの少し胸が高鳴った。

「郭嘉殿も些か飲み過ぎですよ。」

「そしたら、こうして…相手の首に手を回す…」

紫鸞は動揺している

「郭嘉殿…！」

荀彧の声なんか耳に入ってすらなかった。
隣で荀攸は既に船を漕いでいる。

「そうして最後にこう。”無理をしないで……”って」

「郭嘉殿…。。。」

荀彧は頭を抱えた。
紫鸞は郭嘉に耳元で囁かれて赤面していた。

「うん。こんなものかな？無名殿ならきっと上手くいく。」

郭嘉は紫鸞から離れると笑顔を浮かべながら元の席に戻った。

「公達殿達は私が送りますから…無名殿は曹操殿の所へ行ってあげてください。」

荀彧に言われるがままに紫鸞は曹操殿の所へ向かった。





「郭嘉殿…知りませんよ……明日無名殿に怒られても……。」


「あっははは。感想が楽しみだね。」

三人はその後も共に飲み続けていた。




紫鸞は曹操殿の部屋の前に来た。

「入れ。」

短く言われた後、紫鸞は部屋へ入った。


「紫鸞か。このような時間に一体どうした。」

大量の書簡を読みながら問いかけた。


紫鸞は先程郭嘉に言われた通り、曹操の隣に座る。
曹操は書簡を読む手を止め、紫鸞の方を見る。

「どうした。」

飴色の瞳と目が合う。
紫鸞は曹操の手の上に自身の手を置き、見つめる。

曹操は彼の意図がよく分かっていなかった。

「口で言わないと何も分からないぞ。我が紫鸞よ。」

そう言う彼の言葉を無視し、紫鸞は曹操の首に手を回した。

曹操は一瞬驚きはするも、紫鸞の行動に受け応えた。

「無理……しないで……。」

「……。どこで覚えた。そのような真似を…。む…郭嘉の匂いがするな…。紫鸞よ…お前は郭嘉と何をしていた。」

「っ……！」

曹操は驚くどころか、苛立ちを募らせていた。

「言えぬか？我が紫鸞よ。お前を鳥籠の中から出さぬようにしてやろうぞ？」

紫鸞は青ざめる。
急いで、納得してもらえる事情を説明したのだった。
それを聞いて曹操は安心と共にため息を着く。

「郭嘉め……あいつは戦略や頭脳には長けているが、こういう悪癖は治していかねばならんな……。」


紫鸞は一言ごめんなさい。と謝る。

「謝る必要などない。これからお前には責任を取ってもらう。」

そう言うと曹操は紫鸞の手を引き、褥へと向かったのだった。










翌日


「郭嘉よ。紫鸞に余計なことを覚えさせるな。」

「おや？その反応ということは無名殿は上手くいったと…？」

「郭嘉。」

「あっはは。すこし悪戯を覚えさせてあげたかっただけなんです。ふふ。」







一方紫鸞は日が昇るまで曹操に抱き潰されたのだった。